「ダビデの星」を拒んだ画家フェリックス・ヌスバウム

大内田わこ【著】

• 販売会社／発売会社: 光陽出版社
• 発売年月日: 2010/03/15
• JAN: 9784876625116

商品レビュー

2011/07/15

　アウシュヴィッツで殺された画家フェリックス・ヌスバウムの生涯を、関係者の証言や著者自身の取材によって浮かび上がらせた一冊。ヌスバウムの生い立ちから、ベルリンでの修業時代、さらには亡命生活までをたどり、彼の人となりや、苦しく、また不安に満ちた亡命先での生活を生き生きと描き、絶望的な状況を生き抜くことを絵に託す姿を感動的に描き出しているが、彼の芸術への言及があまりにも少ないのが、やや物足りない。ヌスバウムの作品の特質、個々の絵の魅力にもう少し踏み込まないと、彼が画家であったことは伝わってこないのではないか。ドイツ語資料の明らかな誤訳もいささか目に付く。ヌスバウムの生涯と芸術を紹介した日本語の書物はまだ少ないだけに、惜しまれる。

2010/10/14

ナチスドイツに迫害され殺された画家の描いた当時のユダヤ人たちの恐怖が伝わってくる。これらの絵が保存されていたことだけで奇跡だ。
ヒトラーの支配は文化、芸術にも及んだ。ゲッペルスはドイツ文化をナチスのイデオロギーと思想に同庁させることだった。
ワイマール期の学問、文化をリードしたのはユダヤ人だった。
ナチスが政権を取るまでのドイツはヨーロッパのユダヤ人にとって文化と自由の象徴だった。多くのユダヤ人がドイツ国民として、芸術、科学、文学、産業など、様々な分野で活躍し、成功し、自分たちにドイツ人としての未来があると信じて疑わなかった。
第一次大戦ではドイツ軍に従軍して勲章をもらったユダヤ人もたくさんいたし、彼らはドイツ人としての誇りを持っていた。
一体、自分は何者なのか？当時のユダヤ人たちは全員そう思っていたことだろう。それらの悲しみ、苦痛を絵画を通して表現している。私が死んでもこれらの絵を残してほしいと伝えて、現在もドイツに残っている。