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アフリカの神話的世界 岩波新書
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 岩波書店 |
発売年月日 | 2002/06/14 |
JAN | 9784004150671 |
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アフリカの神話的世界
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商品レビュー
4.3
6件のお客様レビュー
ユング派の臨床心理学者である河合隼雄さんの著作にはトリックスターという言葉が頻繁に出てくる。トリックスターという考え方はユングが発案者だからだ。 しかし、河合さんは山口昌男さんがトリックスターという言葉を使いはじめたのを知って自分も使い出したと告白している。 ということで、この本...
ユング派の臨床心理学者である河合隼雄さんの著作にはトリックスターという言葉が頻繁に出てくる。トリックスターという考え方はユングが発案者だからだ。 しかし、河合さんは山口昌男さんがトリックスターという言葉を使いはじめたのを知って自分も使い出したと告白している。 ということで、この本を読んでみたが。どうも、この本は事例研究の本に思えた。 昔話とトリックスターを関連させた河合隼雄さんの本は「昔話の深層」「昔話と日本人の心」などだが、論としては「影の現象学」が一番深い話になっていると思う。
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858 山口昌男 1931-2013年。東京大学文学部国史学科卒業後、東京都立大学大学院で文化人類学を専攻。東京外国語大学、静岡県立大学、札幌大学の教授を歴任。「中心と周縁」「スケープゴート」「道化」などの概念を駆使して独自の文化理論を展開した。『天皇制の文化人類学』 『文化と...
858 山口昌男 1931-2013年。東京大学文学部国史学科卒業後、東京都立大学大学院で文化人類学を専攻。東京外国語大学、静岡県立大学、札幌大学の教授を歴任。「中心と周縁」「スケープゴート」「道化」などの概念を駆使して独自の文化理論を展開した。『天皇制の文化人類学』 『文化と両義性』 『文化の詩学(I・II)』 『知の遠近法』 『「挫折」の昭和史(上・下)』 『「敗者」の精神史(上・下)』 『いじめの記号論』 『道化の民俗学』 『内田魯庵山脈(上・下)』(以上岩波現代文庫)、『アフリカの神話的世界』 『知の旅への誘い』 『文化人類学への招待』(以上岩波新書、『知の旅』は共著)など著書多数。 話に幾分説明不足のところがあるが、ここで、アフリカの昔話は活字になることを前提として語られていないということを記憶にとどめておく必要があるであろう。全く音声として昔話は存在するのである。従って話の進行も、筋の説明ではなく、対話に重点が置かれている。何よりも先ず、語り手は、我々の文化の中で落語の占めている話術的要素を満足させなくてはならないのである。私も採集の過程でよく経験したのであるが、書き下してしまえば何のことはない、たあいもなければ筋の一貫性もない話が、語り手によって生き生きとさせられ、聴き手をまき込む場合が多い。日本では『ジャングル放浪記』という作品で知られる、ナイジェリアの深沢七郎ともいうべきアモス・トゥトゥオラも、全くそういった伝統から出て来た作家であることを知っておくのも無駄なことではないだろう。特に最近は神話分析の流行により、神話といえば、なめらかに話が整理されて記号を付されるのを待っているような愛想のよい素材であると誤解されかけているので、地の肌ざわりと高度の抽象作用の結果を混同しないためにこの点を確かめておくことは必要であるともいえる。 ジュクン王国の最大の祝祭は、プジェという叢林の中で三年毎に行われる祭りであった。この祭りに際しては、王は平常王宮のビエ・コで執行する儀礼を町の東方のプジェという場所で執行する。ところでこのプジェは本来ジュクンの古語で「月経小屋」という意味を持っている。ある古老が私に語ったところでは、「現在プジェのある場所は、かつて王の后たちが月の忌みのために月ごとに籠もった小屋のあった場所である」という伝承があった。これは極めて異常な、ただならぬことである。というのは、ジュクン族では世界観の二元性も介入して、男と女の空間・時間的距離は極めて大きい。その点が最も顕著にあらわれるのは、女の血の忌みに対する男の怖れである。血の忌みのかかった女性の作った食事を男は一切食べないし、血の忌みのかかった女性の通る通用路は、それとわかれば男は通らない。もちろんこれは意識されたイデオロギーであるから、それによって彼らの生活が徹底して束縛されるかというと、決してそのようなことはない。従って経水に対する穢れの観念は、イデオロギー的には徹底しているといってよかろう。 さて、アフリカ的なトリックスター特にエシュの叙述の過程で、読者はギリシャ神話に出てくる神ヘルメス(幸運・富裕の神。商売、盗み、競技の保護神であり、同時に旅人の保護神でもあった。
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アフリカの神話における「いたずら者(トリックスター)」を題材として、彼らの神話の構造と意義を解説した書。著者がフィールドワークで収集したものも含めた様々な部族の「いたずら者」の物語を紹介しつつ、それらを構造主義の視点から比較・分析する。 本書は、アフリカ大陸で語り継がれる神話――その中でも最も大きなウェイトを占める「いたずら者」の神話を扱ったものである。東はエチオピアのアニュアック族から西のコードジボワールのアニー族まで、アフリカの諸部族で語られる「いたずら者」の神話を文字通り東西横断して収集し、構造主義的分析を行っている。なお、本書の内容は著者の過去論文「道化と民俗学」中「(六)アフリカ文化と道化」((一)~(六)『文学』1969年1月~8月)を発展させたものとなっている。 アフリカ神話における「いたずら者」は口伝にて語られる物語の花形であり、それ故にアフリカ世界の精神の内奥を体現する存在である。ザンデ族のトゥレ、マンジャ族のセト、ヨルバ族のエシュ、アシャンティ族のアナンシ……。彼らは時に秩序を破壊し嘲笑するピカロとして立ち現われ、またある時には恵みや文明を人にもたらす文化英雄として世に出でる。部族間で伝播と変身とを繰り返す彼らの神話が体現するものは、善悪両義を兼ね備える力の存在、異なる二極を結び付け統合する媒介の思想、そしてそれらを通して呼び覚まされる世界への内的・統一的な理解である。そのアフリカ的精神は奴隷貿易を通じてアメリカ大陸にも及んでいる。 本書を読んで印象に残ったのは一つ。著者が語る神話の意義である。本書Ⅶ章にて著者は、神話の属性が『荒唐無稽』という言葉で説明されがちなことに言及する。神話の中において事物は(地理的・時代的・思想的距離を差し引いても)我々の日常的感覚では結びつかない形で現れる。だが、神話の意義とはまさにそこにある。事物間の効用性"のみ"を問題とする日常的感覚では見えない「現実」、意識の表層のみに留まらずより深い世界との統一感覚を呼び覚ますものとして神話はある。故に著者は、「神話及び昔話を素材として何事かを語ろうとする場合、そういった素材に接する者に必要とされるのは、話の中に埋没する想像力と同時に醒めた精神である」(p92)と説くのである。その意味では、日常の秩序を飛び越え、矛盾する二極を媒介・内包し、縦横無尽に活躍する「いたずら者」の姿はある意味この神話の本質を如実に体現するものと言えるかもしれない。
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