平和と開発のための教育 アジアの視点から jfUNUレクチャー・シリーズ2

内田孟男【編】

• 販売会社／発売会社: 国際書院
• 発売年月日: 2010/02/20
• JAN: 9784877912055

商品レビュー

2011/09/23

「開発とは自由である。貧困からの自由であり、暴力からの自由であり、その他の苦しみからの自由である」
センの著書『自由と経済開発』の中で、開発とは人間の能動的な力の向上、特に女性や少数民族、社会から取り残された人々の能動的な力の向上を通して、人間の自由を推進することである。と説いています。p17

UNESCOは平和と開発のための戦略的取り組みとして、「平和の文化（culture of peace)」、「万人のための教育（education for all)」、「持続可能な開発のための教育（education for sustainable development)」の促進を掲げています。p25

人材育成（capacity building)。組織構造や制度的・技術的・経済的支援、ガバナンス・システム（管理能力体系）、アカウンタビリティ（説明責任）とともに、リーダーシップや管理・運営の面での人材育成にも取り組まなければなりません。p28

【多様性の排除と包含】
今日、停滞や退行を余儀なくされている社会を詳しく見ていくと、そのほとんどが民族国家に反して、多民族、多言語、そして多くの場合には多宗教社会から成っていることがわかります。p29
→少数派集団の多様性を包含することが重要な要素となります。これには言語的少数派、民族的少数派、国家的少数派が存在し、また様々な障害を持つ人たちも含まれています。地域によっては憲法に反して、特権を持つ者とそうでない者の階層が決められた、厳格なカースト制を維持しているところもあります。また地理的要因や経済面で不利な状況下に置かれている人々もいます。

時空や空間を超えたコミュニケーションの主要な手段が書記媒体であるため、読み書きをする能力はおそらく話す能力の次に最も重要な技能です。p32

マイノリティがマイノリティとして抑圧される所以は多くの場合、適切な教育・訓練の資源やプログラムを提供するためのリソースや能力が不足しているためです。リーダーシップや管理能力、技術的能力や運営力を含む国家能力の育成は国連と、UNESCOをはじめとする国連の専門機関にとって重要な使命です。p41

以下、黒田一雄氏特別寄稿「教育分野における国際協力の世界的潮流による」

「教育」は21世紀の国際協力における主要なセクターになりつつある。1990年の「万人のための教育世界会議」以来、1995年の「社会開発サミット」や2000年の「国連ミレニアムサミット」を通じて、開発における教育、特に基礎教育の重要性は指摘され続けた。p63

1990年の「万人のための教育世界会議(World Conference on Education for All)」はタイのジョムティエンで開催されたため、よく「ジョムティエン会議」と呼ばれる。p64

ジョムティエン会議が発信した最も明確なメッセージは基礎教育の重視ということであった。基礎教育とは「人々が生きるために必要な知識・技能を獲得するための教育活動」と定義された。

1999年のユニセフ「世界子ども白書（The Status of the World's Children)」では、教育をその年次テーマとして取り上げ、「何よりもまず学校教育は生涯学習の基礎にならなければならず、アクセス可能で、質が高く、柔軟で、ジェンダーに配慮し、女子教育を重視するものでなければならない。また国がその主なパートナーになり、幼い子どものケアからスタートしなければならない」とした。p69

ユネスコ憲章前文「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和の砦を築かなければならない。相互の風習と生活を知らないことは、人類の歴史を通じて世界の諸人民の間に疑惑と不信をおこした共通の原因であり、この疑惑と不信のために、諸人民の不一致があまりにもしばしば戦争となった。人類の知的及び精神的連対の上に平和は築かれなければならない。」p74