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金時鐘四時詩集 失くした季節
定価 ¥2,750
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 藤原書店 |
発売年月日 | 2010/02/22 |
JAN | 9784894347281 |
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金時鐘四時詩集 失くした季節
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日本的抒情に刃を向け、季節の循環の自然をあえて取り上げることで、その自然への感傷に徹底的に対峙し、否定する姿勢を貫いている。済州島四・三事件は、作者の中で今も息づいている。かつての金嬉老事件で、被告人の弁護側の証言台に立った、行動的詩人である。
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出張で出かけていた仙台の空港の周辺を歩き、津波の爪痕をいくつか目の当たりにした後、広島へ帰る機内でこの詩集を読んだ。すぐに次のような詩句が胸に突き刺さってくる。「物見では行くな。/古道の石標ひとつ/千年の沈黙にしずもっている。/行ってはよごず生身では行くな」(「空」)。植民地に...
出張で出かけていた仙台の空港の周辺を歩き、津波の爪痕をいくつか目の当たりにした後、広島へ帰る機内でこの詩集を読んだ。すぐに次のような詩句が胸に突き刺さってくる。「物見では行くな。/古道の石標ひとつ/千年の沈黙にしずもっている。/行ってはよごず生身では行くな」(「空」)。植民地に生まれた詩人を「皇国少年」にしながら彼のなかに居着いた「日本語」を内側から突き破る、言語の詩的な革命の到達点とともに、「日本の四季」をあまりにも美しく歌う「抒情」との対決の軌跡を示すものとして送り出されたこの「四時詩集」──「四時」という言い方からしてすでに、「四季」とは異なった時を指し示していよう──に収められた詩は、「四季」の巡りに抗いながら、そこにある時の流れがともすれば押し流してしまう記憶の疼きを、日常の周縁から拾い出している。「一枚の葉」という詩にうたわれるように、土になることのできない一葉の記憶を拾い上げるようにして。ただし、土に還ることのできないものたちへ差し伸べられる言葉の一つひとつは、屹立し、日常を抉る。それは「夏」を「声を立てず/立てるべき声を/底ぴからせている季節」として見いだし、赤く輝く秋の風景のうちに「錆び」を捉える。そこにあるのは、流れることのできない時の凝縮された蓄積である。「時が流れるとは/自転にあやかっていたい者の錯覚だ」(「錆びついた風景」)。そして、このような時のなかで、たしかに人と人は別れ、散っていくが、同時に積もっていくのである。「家ごとひそかに/めぐりゆく時をとどめおいて/街の荒野に散り、つもる/ああいとおしい人たち」(「人は散り、つもる」)。そのような人との再会も、この詩集に収められた「四時」の詩の主題の一つであろう。ちなみに、そこにある出会いは、「こともなく誰もがつながり/つながる誰も/そこにはいない」ような「つながり」──これが今日「絆」と呼ばれているのかもしれない──の対極にあるのだろう。さて、心のなかに「つもる」人との「再会」の頂点に位置するのが「四月」、詩人自身が関わった、済州島の「四・三事件」の「四月」であろう。詩人は、この時季を彩るものたちから死者たちの便りを受け取り、火山の島の「四月」を幻視し、悔悟に身を焦がす。「木よ、自身で揺れている音を聞き入っている木よ、/かくも春はこともなく/悔悟を散らして甦ってくるのだ」(「四月よ、遠い日よ」)。このように、時に臓腑を摑み出すように、しかしながら独特の静けさに貫かれた言葉で、疼きを止めず、土に還ることのない記憶の葉を拾い上げ、「四季」の巡りを逆撫でする「四時」の詩。その強度を、今ここでどのように受け止めることができるだろうか。
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