勇猛精進の聖-鈴木正三の仏教思想-

加藤みち子(著者)

• 販売会社／発売会社: 勉誠出版
• 発売年月日: 2010/01/01
• JAN: 9784585054375

商品レビュー

2010/05/01

ブログでの紹介は読了してから、と思ってたら遅くなっちゃってるので、とりあえずこっちで。私の先輩兼腐れ縁兼戦友の、初の著書です。鈴木正三という人物の思想に焦点をあてた研究書、という硬い印章の本ではあるのですが、その実、「人間が人間という不完全な存在のまま、どのように歩むことが成仏であり救済であるのか。むしろそれがいかに人間らしい行為であるのか」といった、単純にして生体組織のように入り組んだ問いへの挑戦の一冊です。そして、彼女の論文の一番の読みどころは、真摯でありながらユーモア感覚を決して忘れていないところ。一見フォーマットに従っているその筆運びに素直に従って読み進めていくと、思わぬところで「やーい、引っかかったー」と指を指して笑われる、そんなスリルに満ちています。権威だの定説だの常識だのに囚われず、素の状態に立ち返ってから、テクストを一緒に読み解いて行く。そうすると、彼女の困惑や苛立ちや喜びが、読み手にもセキララに伝わる筈。そして、それを指摘すると、きっと大慌てできまり悪そうな顔をする筈。そんなふうに、著者の息吹が伝わるような研究書って、実は本当に少ないのですよ。

そして、宗教思想への「思想」としてのアプローチに、著者の立ち位置がフラットであることは何よりも重要なことだと思うのですが、実はそれもとても少ないのですよ。大抵、既に対象物への信仰者であったりする。
対象物にフラットに向き合うことは、己の姿をどこまでも問い直し、立ち位置を明らかにし、その部分までをも文章化していく行為である。それを体現してこそ、真の思想研究書といえると思います。

指さして笑われないよう、慎重に読み進んでいる状態なわけですが（笑）、セキララな自分自身と向き合う気のある方は、レッツチャレンジ、な一冊です。
（読み終わったら書き直す！）