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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | マガジンハウス |
発売年月日 | 2000/01/20 |
JAN | 9784838711710 |
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商品レビュー
4.7
3件のお客様レビュー
書評の名著。 というより映画の予告編。 辻原先生はあらすじ描きの名手。 それもそのはず、小説作法の習得にあたかも画家のデッサンのごとき日夜の鍛錬としたらしい。 紹介された十数編の名作は必ず読みたくなる 。
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『遊動亭円木』一作で感嘆したのだが、巧い書き手である。 何が上手いか。まず題名のつけ方がうまい。『遊動亭円木』でも、そうだが、ひねりが効いていて洒落っ気がある。それでいて、今はもう喪われてしまったものに寄せる仄かな哀切感が漂う。それは、たかだか四百字詰め原稿用紙四枚程度にまとめ...
『遊動亭円木』一作で感嘆したのだが、巧い書き手である。 何が上手いか。まず題名のつけ方がうまい。『遊動亭円木』でも、そうだが、ひねりが効いていて洒落っ気がある。それでいて、今はもう喪われてしまったものに寄せる仄かな哀切感が漂う。それは、たかだか四百字詰め原稿用紙四枚程度にまとめられた書評にもあてはまる。主題を押さえた上で、もうひとひねり加える。そうすることで、読者をひきつける。たとえば、「僕には魚が釣れない」。これなぞは、まるで今風の小説の題だ。「四十九日の物語」は、主題をずばっと言い切ったタイトル。「小説の堪えられない旨さ」は、いわずと知れたクンデラのもじり。 次に、書き出しがいい。あえて断言口調を用いる。曰く「小説の主人公には深い情熱と知性、要するに『性格』が必要だ。」これは北村薫の「円紫さん」シリーズを語る冒頭。「一冊の本について、もしそれを正確に本の終わりからはじめへと要領よくたどるなら、これにまさる評はないのでは、と考えている。」ではじまる中勘助の『犬』の書評は、ゆくりなくもその実例を見せる。「わが日本文学に花柳小説というジャンルがあった。」と、過去形ではじめて、今はないその花柳小説の変種として井上靖の『あすなろ物語』を持ってくる力業。どれも上手い。 そうなると当然のことながら、結びが気になるが、これがまた、いい。絢爛豪華な舞台が突如として暗転するような息を呑む終わり方や、嫋々とした余韻を残す結末と、工夫をの跡が見て取れる。初恋の人ドロレス・デル・リオとの恋のさなかに撮りあげた『市民ケーン』について、「彼は幸福の絶頂にあった。映画の入りはさんざんだった。」という対句の決まり文句。鏡花張りの語り口調を生かした『眉かくしの霊』の結びはこうだ。「か細い女の声音で『似合いますか』。まわりがはっと息をのんで、しんとなる。」まるで鏡花だ。 それでは、肝心の中身はどうかといえば、そこはそれ、練りに練られている。特に、今まで他の評者が触れていないだろう新解釈や、気づいていない魅力を語るとき、作家の筆はいちだんと冴える。カフカの『変身』。作家はこのよく知られた物語を、友人が死んで四十九日の法要を終えたとき、突然思い出す。冒頭をこう変えて読む。「ある朝、グレゴール・ザムザは……自分が死んでいるのに気づいた」と。「これはつまり『四十九日』の物語なのだ。四十九日目に死者の魂は肉体を離れて冥土へ旅立つ。土中では死体の溶解がはじまる。生きている者たちは再び生への活気を取り戻すだろう。死者は自分の死を受け入れるだろう」。この物語のはじまりから終わりまでは正確に一ヶ月半となっているそうだ。 数え上げれば、うまいと思える点は、まだ他にもある。引かれている引用文がいい。あとで、何かの時に拝借できるという効用がある。「薬を飲みたがる気持ちは人を動物と区別する最も大きな特徴のひとつだ。」これは、オーソン・ウェルズが18ヶ月目にベビーベッドで往診に来た医者に吐いた科白だそうだ。語り口の上手さ。北村薫を評した言葉がそのまま作者にもあてはまる。「理におちず、韜晦せず、情味に欠けず、あきさせない。」その通りである。 藤沢周平の作品を評するのに、持ち出した「サウダーデ」という、ポルトガル語以外に訳せないといわれる感情を、作家は「失われた時と場所への憧れ」と表現している。不在への憧れが悲しみをかきたてると同時にそれが喜びともなる、えもいわれぬ虚の感情……。それはまた、この書評集に流れる通奏低音でもある。書評というより、よくできた短編小説を読んだあとのような満ち足りた読後感が読者を浸す稀有な書評集といえよう。
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やたらうまい。本・映画をめぐるエッセイ。3ページ前後ですとんと落ちる。もちろん読みたい本が大量に増えた。
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