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Any:建築と哲学をめぐるセッション 1991~2008
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 鹿島出版会 |
発売年月日 | 2010/01/30 |
JAN | 9784306045323 |
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Any:建築と哲学をめぐるセッション
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ひと通り読むと気づくことだが、本書では特定の年が何度も登場する。つまり、①一九六八年(文化革命)、②一九八九年(ベルリンの壁崩壊)、③一九九五年(阪神淡路大震災・オウムサリン事件)、④二〇〇一年(9.11テロ)という、いずれも歴史上の「亀裂(クラック)」が起こった年のことだが、磯崎新さんは、それら歴史上の「亀裂」と自分の活動がどのように関係しているのかを本書のなかで語っている。 そもそも磯崎さんという人は「亀裂」というものに非常に敏感な人で、経歴を振り返ってみると、七十年代の初めには「手法論」という設計の方法論を展開し(①の直後)、九十年の初めからは国際的な建築会議Anyコンファレンスを始めて、そこで「造物主議論」という新たな設計論を提起している(②の直後)。さらに一九九六年には、ヴェネツィア・ビエンナーレ建築展においてコミッショナーを務め震災の「亀裂」そのもののインスタレーションを企画した(③の直後)。新しい世紀に入ってからは、「イコン」、「漢字」、「アルゴリズム」をキーワードに「造物主議論」をさらに展開している(④の直後)。 「亀裂」は、磯崎さんの具体的な建築作品にもたびたび表われている。初期の作品である《N邸》は、建物の躯体と内部空間との「ズレ(=亀裂)」をテーマにしたものであるし、「手法論」に基づいて設計された《群馬県立近代美術館》は、幾何学的な立方体フレームと建物の実現化に伴う諸条件(施主の要望、敷地、予算、施工技術など)との「亀裂」から立ち現れる、形式性を問うものだった。また《なら一〇〇年会館》は偽善的なコンテクスチュアリズムに陥ることなく、敷地周辺に対して「亀裂」を作りながらも、奈良という伝統的な都市のコンテクストを新たに組み替えている。特に最近の、漢字のハイブリッド性をモデルにした《ヒマラヤ芸術センター》は、異種の建築要素を野蛮につなぎ合わせた複合体となっており、建物そのものに「亀裂」が走っている。 本書と補完し合うように出版された『ビルディングの終わり、アーキテクチュアの始まり』で磯崎さんは「亀裂が生成の契機になっていた」(p30)と語っているが、こうして見てみると、磯崎さんという人は「亀裂」そのものを自身の建築の母胎として、新たな設計論や建築のビジョンを思考していたのだということを改めて感じる。 磯崎さんが敬愛してやまない、ルネサンス期の建築家のブルネレスキは、それまでの歴史を切断することで「亀裂」をつくりだし、新たな建築の歴史が展開するきっかけをつくった。磯崎さんはまさにこのブルネレスキと同じような方法で、建築の新しい世界を切り開いている。私たちはその磯崎さんの姿に、「不連続の連続」という独自の歴史観(時間の哲学)によって支えられた、荒々しい「建築への意志」を感じずにはいられない。(T.N)
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