1/2の騎士 講談社文庫

初野晴【著】

• 販売会社／発売会社: 講談社
• 発売年月日: 2010/01/14
• JAN: 9784062765657

商品レビュー

2024/08/03

マドカ
円裕美。アーチェリー部主将。高校三年生。

加奈子
マドカの隣のクラス。中学校からの付き合い。アーチェリー部副主将。橋本。

梢
アーチェリー部。二年生。

サファイヤ
マドカの好きな人。女装が好きないたいけな少年。

松下
古文の先生。

アキ
二年生の部員。

ミヨ
二年生の部員。

おさげの子

ソフトカールの子

前下がりボブの子

鈴
半年前まで付き合っていた。合気道道場を営む家のひとり娘。

十条
暴力団・大嶋産業の関西弁を喋るゴリラみたいな汚らしい組長代行。

もりのさる

青木
ゴリラの手下。サイ。

ドッグキラー

篠原
市内有数の土木業者、いくつもの不動産を持つ資産家。やくざの元組長。

中村
篠原家の住み込みの家庭教師。篠原家に学費の援助を受けている大学院生。

円裕一郎
マドカの父。警察官。

深沢幸江
十年前までマドカの家に住み込み、家事の手伝いやご飯をつくりにきてくれた。

篠原ひより
盲導犬が何者かに殺される。

クレア
殺されたひよりの盲導犬。

ベルタ
幸江の盲導犬。

インベイジョン

キリン
身長が二メートル近くある男。総合調査会社茜沢エージェント株式会社。冠木篤彦。

直
マドカたちの先輩。

ラフレシア

元バレー部のセッター

元陸上部のキャプテン

新聞部の一年生
眼鏡にツーサイドアップ。

ロク
車椅子の少年。ハロの一番弟子。野口鉄郎。

サン
車椅子の少年の従者のようにそばに立つ大男。御厨修司。

園芸部の一年生

ハロ
天気予報サークルの代表者。二十二歳。

朋子
マドカの亡くなった母。

ナナ
身体が不自由なオペレーター。

岡田
老夫婦。

灰男

2021/10/13

出てくる人たちがみんな1/2な感じで色々と考えられたのでよかった。異常な動機への共感は難しかったけど、でもそれも実は大差無いねという結論かな。最後の方のサファイア絡みの展開は少し不満だけど。

2019/01/09

初野晴『1/2の騎士』読了。
文庫700頁弱の大作ながら、読みやすさ、構図の美しさ、テーマ性、物語の求心力、どれをとっても素晴らしい。女子高生マドカと相棒役のサファイヤという主人公たちがしっかり軸となり、様々な形で葛藤するマイノリティへの壁を超えながら、街に現れた四人の異常犯罪者に立ち向かっていく。長い作品にありがちな空中分解は起こらず、テーマもぶれず、加速していく。
驚かされるのはその可読性。文章における読みやすさももちろんだが、ストーリーの運び方が上手い。章ごとに次が気になり、期待通りしっかりとオチる、そしてまた次の章が気になるようにできている。連鎖的に読者の感情を惹き込んで行く。
章立ての構図も工夫されていて、「騎士叙任式」と銘打たれた「もりのさる」の事件は後に感情移入させるための細やかな工夫になっている。その後の「序盤戦」から「終盤戦」に至るまでの禍々しい異常犯罪者との対決は謎としても魅力的だがミステリ的な仕掛けもそれぞれ技巧的。
飼い主の前で盲導犬を殺すドッグキラーとの戦いでの意外な真相、部屋に気配だけを残す侵入者インベイジョンとの戦いでの動機の悍ましさや解決のロジック、毒を散布する姿なきラフレシアとの戦いでの狂気的に歪んだ「捻れ」は印象的。民間伝承を用いるのも面白い。
主人公二人の成長と苦難の物語として、徐々に危険な強敵と出会うのは段々と本質的で誤魔化しの効かない絶望と葛藤に向き合うということでもある。
「一騎打ち」における灰男グレイマンとの対決はある種「騎士叙任式」と対になるべき物語。全てが終わっていく切なさが苦しくなる。
物語が面白いことがそのまま感情移入に繋がっていき、綺麗に最終章を迎える。そのシンプルさ何より魅力的な作品