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荷風全集(第7巻) 冷笑・紅茶の後
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荷風全集(第7巻) 冷笑・紅茶の後

永井荷風【著】

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荷風全集(第7巻) 冷笑・紅茶の後

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 岩波書店
発売年月日 2009/12/22
JAN 9784000917278

荷風全集(第7巻)

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2022/10/24

 荷風全集7巻は、1908(明治41)年から1911(明治44)年、作者28歳から31歳にかけての小説・戯曲・随筆を収める。特に大きいのは長編『冷笑』と随筆集『紅茶の後』だ。  長編『冷笑』は1909年から翌年にかけて新聞に連載された。若書きの作品で青いようなところもあるが、後年...

 荷風全集7巻は、1908(明治41)年から1911(明治44)年、作者28歳から31歳にかけての小説・戯曲・随筆を収める。特に大きいのは長編『冷笑』と随筆集『紅茶の後』だ。  長編『冷笑』は1909年から翌年にかけて新聞に連載された。若書きの作品で青いようなところもあるが、後年の荷風文学の特徴となるような面もすべて含んでおり、様々な要素がごった煮の、ひどく豪奢なシンフォニーのようだ。いや、混沌とも言う。  欧米からの帰国において改めて日本文化を見つめ、いささか世相に「冷笑」を浮かべつつ、理想論めいたりもする文明批評が繰り出される。ちょうど帰国直後の荷風自身の感じたこと・考えたことなどを複数の人物に分散させ、会話させている。しかし荷風という一人の人間としてもともと統合されている諸要素をわざわざ分解させているだけなので、これらの登場人物同士の会話は、他者対他者の闘いのような議論になることは決して無い。しょせんはすべて同質であって、代わりばんこに自説を開陳していくだけという、自己・自己・自己の並列的な見本市になっている点、「ポリフォニー的」ドストエフスキーに描かれる人間同士の確執とは完全に逆のものである。  そのように文学としての構造に弱さはあるものの、荷風文学の精髄とも言うべき情趣溢れる風景描写が延々とはさめられたり、江戸的なものへの傾倒、花柳界への親しみなど、荷風的なるものがひしめいており、お腹がいっぱいになる。  理念を滔々と言述しまくるようなことを、後年の荷風は全くしなくなったし、ここには登場しない「女性」という後の荷風文学最大の魅力もまだ欠いており、そこには青春期の不安定な混乱が確かにある。が、永井壮吉という一人の人間の道行きをたどるとき、この作品の重要性はかけがえのないものとなるだろう。  1910(明治43)年に荷風は(森鴎外が関わった人事によって)慶應義塾大学部文学科教授に就任し、直後に三田文学を創刊する。ここからしばらくは小説を書かなかったようだが、その間の文章は随筆集『紅茶の後』(1911年)としてまとめられた。  この『紅茶の後』に、『「冷笑」につきて』という一文があるが、これは『冷笑』を解釈する上では外せない、興味深い文章だ。 「日本を包む空気の中には立憲政治の今とても、封建時代の昔に少しも変わらず、一種名状すべからざる東洋的、専制的なる何物かが含まれていて、いかに外観の形式を変更しても、風土と気候と、凡ての目に見えないものが、人間意志の自由、思想の解放には悪意を持っているように思われてならぬ処がある。(中略)  日本という処は、深く考えずして、早く諦めをつけて仕舞うには、世界中此様(こんな)便宜な処はないと思っている。これは敢えて仏教儒教等の思想の感化ばかりでなく、気候風土が大いに与って力ある所以とも感じられる事が屡々ある。  「泣く子と地頭にゃ勝たれない。」  「長いものには巻かれろ。」  こう云う諺は西洋の近代思想には容易に見出されないものであるが、日本には此種類のものは数限りなく沢山ある。そして、其の発表の形式が妙にすねて滑稽冷笑の調子を帯びている。川柳的に浅薄な、厭味な処が、日本の生活及び思想の根本には最も適合しているらしい。  (中略)  正義でも不正義でも、そは論ずる処にあらず。唯だ従え、唯だ伏せと云うこの一語が、日本に生活する限り最も吾々の生命財産を安全ならしむる格言ではなかろうか。」(P.319)  日本人は、明治の頃から既にこうだったのか・・・。

Posted by ブクログ

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