熱砂 文春文庫

高嶋哲夫【著】

• 販売会社／発売会社: 文藝春秋
• 発売年月日: 2009/10/08
• JAN: 9784167773144

商品レビュー

2023/08/27

母親のおすすめで借りて読みました。
テロとかアフガニスタンとか、色々と見えない野望というかが渦巻く物語。
ハードボイルド風の話と戦場カメラマンの過去と現在。
主人公が感傷に浸ったりするシーンは少しおじさんの過去の栄光っぽい感じはしますが。中央アジアへ移ってからの話はかなりリアル感があり、展開に引き込まれて割と一気に読みました。
中央アジア周りの件は利権が絡んでいたり、昔からそうですよね、アジアもアフリカも大国の利権争いに巻き込まれていろんなものがでっち上げられたり。
イランやイラクなどもそうですが、誤爆があったり、報道されているうち、何が本当なのか。今回の作品はフィクションだとは思いますが、現地で活動するNGOなどリアルっぽい描写もあり、興味深かったです。

2020/06/02

かつて報道カメラマンをしていた主人公・柴田が、学生時代の恋人とその子ども２人を乗せた飛行機がアフガニスタンに不時着しゲリラに拘束されていることを知り救出に向かう。そして、16年前に共に過ごし、今はアフガニスタンの英雄となったゲリラのリーダー・ヘーゲルを探し歩き、過去の辛い記憶と向き合う。元恋人の拘束の裏に隠された思惑とは何か、元恋人と現在の恋人、そしてヘーゲルを柴田は守ることができるのか、アフガニスタンは平和への一歩を踏み出せるのか、ミステリー・冒険・政治ドキュメンタリーの要素満点の小説。

外交官家族がなぜ追われたのか、怪しいアメリカ人記者は何者なのかとミステリーの要素もあるし、パキスタンやアフガニスタンの現地のリアルな生活、人々の様子を記したルポ的な要素もあるし、中東を舞台にした先進国によるエネルギー争奪戦、アフガニスタンの苦悩の歴史、民族紛争の実態は政治ドキュメンタリー的でもあり、とても読みごたえがあるし、勉強にもなった。

これまでの長い歴史おいて、アフガニスタンが先進国の勝手な思惑によってどれだけ多くの犠牲を払ってきたのかを思い知らされた。そして、そのために命を落とした幼い子どもや無実の民を含む何万人もの尊い命の報われなさに心が痛んだ。平和を壊すのはたった一発の銃弾で十分だが、平和を再構築するのには何十年という年月がかかることを改めて感じた。

2015/12/23

現在でも中東戦争は続き、テレビ、新聞の報道がルーチン化している中で、この本を読んで改めて考えさせられた。
斬新な切り口からのフィクション。リアリティあって迫力満点で面白かった。