熊になった少年

池澤夏樹【著】, 坂川栄治【絵】

• 販売会社／発売会社: スイッチパブリッシング
• 発売年月日: 2009/07/07
• JAN: 9784884182861

商品レビュー

2024/11/07

たまたま見つけて一読。
アイヌに対して悪き一族を「トゥムンチ」と呼ばれているそうだ。そのトゥムンチではクマを捕まえても感謝の意を表せず馬鹿だから、と。魂の送りもせずにいる家族に対して疑問を抱く息子イキリはある日、出会ったクマに殺された叔父から何故か助けられて兄弟クマと一緒に成長する。親離れをして独り立ちしたある日
、弓矢に襲われるとまた人間に。
民話の体裁を取っているので読みやすく、ご本人も読み聞かせに多用していた様子。
アイヌからの派生で読むのはありかと。

2023/05/14

漫画『ゴールデンカムイ』を読んでいたのもあって熊狩りにあって熊の神様へ祈ることなどがイメージしやすかった。

神話や民話は寓話であることを思い出す。
傷つくことは人が変化することの契機となる。(通過儀礼のために故意に人体を傷つける文化は暴力的だと思う)

寓話的だが、本作では利己的な人間に天罰がくだるわけではない。
気高い魂が失意の中、存在の苦しみや孤独に苛まれる。

祈るとはどういうことだろうか。
祈りは対話だと習ったことがある。誰との対話か。

祈っても祈らなくても狩りの成功や失敗には関わらないのかもしれない。
祈ることは自己や他者、それぞれの時間、過去を振り返り反省することでもある。
神の在不在は問題ではない。

自分の行いや過去を正当化するでもなく、ただそのまま受け入れるために人は頭を垂れ祈るのではないか。

まだ結論は出ない。

2022/11/20

熊を狩る一族に生まれながら,熊に育てられた少年イキリの物語。生き物を尊敬し感謝することの大切さを教えてくれる。熊でも人間でもないイキリの嘆きは切ない。