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ヒトラー権力の本質
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 白水社 |
発売年月日 | 2009/06/09 |
JAN | 9784560080122 |
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ヒトラー権力の本質
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ヒトラー及び第三帝国の権力構造を「カリスマ支配」の概念を軸に読み解く好著。 本書は、ナチスドイツの統治およびその所業をヒトラーの個人的な資質に求めるのではなく、その社会・政治構造にもとめた「構造派」の研究である。 「カリスマ支配」とはマックス・ヴェーバーが提唱した概念で、「指...
ヒトラー及び第三帝国の権力構造を「カリスマ支配」の概念を軸に読み解く好著。 本書は、ナチスドイツの統治およびその所業をヒトラーの個人的な資質に求めるのではなく、その社会・政治構造にもとめた「構造派」の研究である。 「カリスマ支配」とはマックス・ヴェーバーが提唱した概念で、「指導者」となった人物を信奉する「帰依者」が、その人物にヒロイズム、偉大さ、使命感を認めることが、その支配の正当性・権威の根拠となるような支配体制のことである。 ヒトラーはまさに「カリスマ」支配者であった。 ナチスに入党以降、他を圧する独特の弁論術で党内、聴衆に信奉者を獲得していき、政権を取った後は積極的な外交とその成果を喧伝するプロパガンダの徹底的な活用で、ますます自分を「救世主」として仕立て上げていった。 しかしカリスマ支配は本質的に不安定である。 まず、カリスマを維持するには何かの「成果」を上げ続けなければならない。ヒトラーの膨張策に歯止めがかからなかったのはまさにこのためである。 また、カリスマ支配は指導者の権威が絶対でなければならない。指導者の権威を制限したり、あるいはそれに挑戦したりできる余地は限りなく少なくしていく方向を取る。それが、伝統的な「合理的・合法的」な統治形態(官僚組織など)の破壊につながり、親衛隊などによる恐怖政治に繋がっていく。 ヒトラーの治世は、本質的に破滅に向かって突き進むしかなかったのである。 ヒトラーを選んだのは紛れもなく、政界、財界、教会等の伝統的エリート層や、少なくない数の民衆である。 ヒトラーに熱狂したのも彼らである。 しかし合法性を超越した「救世主」に長期間何かを託し続けるのは、あまりにリスクの高いことであった。ドイツ国民はその手痛すぎるしっぺ返しを蒙ったのである。 さて、本書の内容は「カリスマ支配」の概念を軸に論旨が展開され、ヒトラー治世に一つの枠組みを与えてくれるし、論理展開に切れ味もある好著である。 ただ、如何せん翻訳がイマイチで、大変読みづらい日本語が続く部分も多い。 最初は本書の軸・全体像を見いだせずなかなか集中できなかった。 ただ、あとがきが大変分かりやすいので、まずはあとがきから読んでから本編に入ると、理解が進むと思う。
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ヒトラー研究では構造派(ヒトラーを生んだ社会政治構造)と意図派(ヒトラー個人の意図、理念)に分かれる事が多いが、カーショーは構造派から一歩先んじ、ヒトラーを支えた非ナチの保守的及び一般大衆という、なにはともあれナチを支持した立場に焦点を当て、なぜ、成功しそうも無い人間があのような権力を持ち得たのかという問いをたてる。 その問いへの説明は以下のようなもの。権力を掴むまでには、大衆に見られた第一次大戦の屈辱、相次ぐ危機による民主主義への失望、これを受けた保守派の権威主義への回帰志向、産業界の反共思想があった。さらに国家より小さな単位への帰属が国家的分裂を加速化した現状から国民的再生を果たしうる指導者を待望する風潮が存在した。 1930年代、議会も共産党と保守系で別れ機能不全を呈し、大統領府への権限集約の傾向にあり、既に民主主義は麻痺しており、権威主義を期待した保守派がヒトラーの人気にあやかろうとした結果、 ナチズムが生まれる。しかし、それは考えられるうちで最悪の選択であった。 結果的に、権力を握ったヒトラーは合法的支配を廃し、自らの個人化した権力を振るうために、カリスマ支配を立ち上げる。それには、絶え間ない「前進」が必要で、「非日常」を大衆に常に見せつける必要があったが、筆者によるとその本質において自己破壊システムが内蔵されていたという。 国家の瓦解は合法支配を、親衛隊など重層的利益集団である「特殊官庁」で置き換えられていくことで進み、そこでの権力闘争は、すべての利害関係者を糸で結んだ総統が欲するように解決された。 侵略で獲得した新たな地では、総統の意を汲みながらも大管区指導者が独立した権限を行使した。しかし、このシステムはいわば、上手く行っている時に、上手くようなもので、旗色が悪くなるとヒトラーの力量に余る運命であった。 ヒトラーは決して、それ自体でヒトラーたり得たのではなく、その支配を受容する社会的な基盤が存在していたのだ。
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