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レベッカブラウン【著】, 柴田元幸【訳】

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 マガジンハウス
発売年月日 2009/04/23
JAN 9784838719716

犬たち

¥220

商品レビュー

3.8

13件のお客様レビュー

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2024/05/02

第1章ー犬ー神の内在について “ある夜、私のアパートに犬がいた。” ここから不穏で禍々しく、美しいいきものとの不条理劇が始まる。 私は恐れと共に犬の存在を受け入れ、同時に私を犬が受容してくれたと感じる。 犬に対して苛立ちを募らせながらも、犬が立ち去ってしまうことに怯える関係性は、...

第1章ー犬ー神の内在について “ある夜、私のアパートに犬がいた。” ここから不穏で禍々しく、美しいいきものとの不条理劇が始まる。 私は恐れと共に犬の存在を受け入れ、同時に私を犬が受容してくれたと感じる。 犬に対して苛立ちを募らせながらも、犬が立ち去ってしまうことに怯える関係性は、第4章-骨-慈善について、において別の側面をみせる。 私は犬にプレゼントとして肉と骨を買い与える。 喜ぶペットと戯れあう微笑ましいシーンを想わせながら、それは肉体的には敵わないものを一時的に支配下におくという恍惚。 愛の関係性が支配へと壊れていくという、レベッカ・ブラウンらしいテーマに見える。 だが第5章以降は、私と他者の関係性というテーマはかすみ、物語は全く別のものへと変容する。 犬は、他者ではない。 それは私が内に抱えるオブセッションの現れだ。 では私自身をこれほどまでに無価値なもの、惨めで穢らわしいものと糾弾し、苛む犬とはなにを意味するのか。 繰り返し語られる、私が抱くイメージがある。 ー 白い足首ソックスを履いて清潔で、可愛らしく悪いことなんか無縁な少女。あれじゃ襲われて当然っていうかわいさじゃなくて、あくまでもいい感じにかわいい少女 ー。 だが、そのあどけないイメージの行き着く先は、凌辱され、犬たちに食いちぎられる悲惨な結末だ。 内面を開放できない自分の殻を打破したい願望? 厳しく躾けられた良い子の秘めた自己破壊衝動? 汚れた自分を自ら罰したい葛藤による自傷行為? 違う。そうではない。 犬たちは決して悪や抑圧の象徴ではない。 犬たちは導引き手なのだ。 21章から始まる終章を読めば、あぁそうだったのかとすべてがわかる。 暴力と苦しみを伴った旅路の果てに、私が見いだすもの。私に課され、私が成し遂げねばならなかったものが何であったかを。 自己否認、闘争と克服、封印してきた過去との邂逅、そして回復ー セラピストから借りてきたかのような貧しい言葉しか持たない僕には、光に満ちた美しいラストをきちんと表現することができない。 “こうして埋められていたものが掘り出され、語りえないことが語られると、解放があった。 私は思い出したゆえに泣き、語られたことゆえに泣いた。再び成ったものゆえ、死んでいたものを生に戻したゆえに私は泣いた。” 損なわれた自分を取り戻すために、人はこんなにも苦しまねばならないのか。 それでも苦しみの先に、人はは自分自身を赦し、もう一度再生することが可能なのだ。 ただ胸が詰まる。

Posted by ブクログ

2024/01/22

一人で住むのがやっとな「私」のアパートに、突然どこからやってきたともしれない一匹の犬が住み着く。短い蜜月期を経て、犬に支配されるようになった「私」たちの関係は、犬が産んだ子犬たちによってさらに破滅へ向かっていく。現代の動物寓意譚。 犬は何を表すのか。この作品を読む人はまずそれ...

一人で住むのがやっとな「私」のアパートに、突然どこからやってきたともしれない一匹の犬が住み着く。短い蜜月期を経て、犬に支配されるようになった「私」たちの関係は、犬が産んだ子犬たちによってさらに破滅へ向かっていく。現代の動物寓意譚。 犬は何を表すのか。この作品を読む人はまずそれを考えながら読むと思う。最初はわかりやすく恋人、それもヒモ気質の若い恋人とのDV関係を描いているのかと思った。だが、「ミス・ドッグ」として犬が喋りだすあたりから様相が変わる。 「私」は環境汚染や貧困、戦争の問題に心痛めるベジタリアンである。意識高い系というよりは、ワーキングプアでありレズビアンである自身に引きつけたマイノリティへの連帯感を持っている。ミス・ドッグの詰問に答える様子から、彼女が常に厳しい自己検閲の世界に生き、周囲の目を気にしていることがわかる。セクシャリティについて親に責められ続けてきただろうことも。 犬たちの視線と声に追い込まれた「私」はついに首を吊る。だが、陰惨なアパートからいきなり景色は変わり、静かな庭園での快適な一人暮らしが始まる。ここから犬たちがやってきて少女の骨を掘りだし、川へ流すラストシーンまでの張りつめた美しさと静けさは本当にレベッカ・ブラウンらしい詩情に満ちていて素晴らしい。 ブラウンの短篇「パン」と「私たちがやったこと」は私のオールタイム・ベスト作品であり、その二作のように『犬たち』も一見支配欲と相互依存がテーマかと思えるが、最後の場面に至ってそうではないと気づいた。胸のなかで死んでしまった子ども、死に続けていることも見て見ぬふりされてきた子どもと向きあえるようになるまでの日々の苦しみを描いていたのだと。少女の骨がでてきた瞬間は虚をつかれたが、川に流したその体が徐々にしなやかな犬のかたちに変身していくと、そうか、そういう物語だったのかと腑に落ちて、読んでいるあいだずっと緊張していた全身の筋肉が一気に弛緩した。 犬という動物の選択も絶妙だと思う。牙があって、力もあるし足も速い。なんで人間の言うことを聞いているんだろうと不思議になる生き物。私は子どものころ犬が苦手だった。アメリカだと成人よりデカい犬を飼ってたりするし、支配関係の逆転はよりリアルに想像できて怖いのかもしれない。ここにでてくる犬たちは肉体的な暴力より言葉の暴力のほうが強いけども。 「私」の何が最初に犬を呼びだしたのか。一人きりの部屋で熟成された愛されたい、肯定されたいという願望か。人が一人で生きていくのは、こういう感情に幾度も襲いかかられるということだろう。犬は「孤独」であり、「孤独の友」だったのかもしれない。

Posted by ブクログ

2021/08/07
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

「犬たち」は何を表しているのか。幻想的で、時に暴力的に進む主人公の生活を描いているが、これは、主人公の心象風景を描いているのかも。最初は歓迎していた犬たちに次第に支配されていき、ついには逃げ出すことになる。何度も現れる生と死の光景には主人公の再生が描かれていると思う。 途中まで、何度も読むのをやめようかと思ったが、最後の章は、それまでと打って変わり、爽やかな清々しい読後感、最後まで読んでよかった〜と思う。 誰しも自分の気持ちに嘘をついては生きられない。

Posted by ブクログ

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