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暴走する脳科学 哲学・倫理学からの批判的検討 光文社新書
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 光文社 |
発売年月日 | 2008/11/13 |
JAN | 9784334034801 |
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暴走する脳科学
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商品レビュー
3.5
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人間らしさとは何か。近年流行し始めた生成AIを見ていると、自然言語であたかも誰か人が質問に回答してくれる様に勘違いするレベルまで来ているのに驚き以上に恐怖も感じる。いつか人間は要らなくなってしまうのではないか、仕事は全て無くなるのではないか、人という存在の価値や意味がよくわからな...
人間らしさとは何か。近年流行し始めた生成AIを見ていると、自然言語であたかも誰か人が質問に回答してくれる様に勘違いするレベルまで来ているのに驚き以上に恐怖も感じる。いつか人間は要らなくなってしまうのではないか、仕事は全て無くなるのではないか、人という存在の価値や意味がよくわからなくなってくる。とは言え、スマホ片手にchatGPTと話しているおり、さらに前もってAIと話している認識があるから、どんなに人に近くてもやはり無機質的な機械と遊んでいる感覚は残る。もしそうとは知らずに生成AIと会話していたら、果たして私程度の思い込みの激しい人間なら、まず気づかない気がする。 脳科学は近年メディアにも取り上げられる機会も多く、バライエティ番組でも脳科学者がコメンテーターとして出演するのを頻繁に見かける様になった。脳とは不思議な器官で未だはっきり解明されていないと思うが、その解明や分析は研究者にとって一生をかけて挑む難題であるのは間違いない。冒頭に書いた様に、人間らしさとは何かという問いにも未だ明確な回答やはっきりした定義は出来ない。 人が何か行動を起こしたり、目の前のモノを掴む様な動作を起こす場合も、脳が確実に命令を与えている(反射的な動作もあるだろうが)。だから事故や病気で手足を失ってしまった人の脳に電極をつけてロボットを意識的に動かすといった試みは古くから行われ成果も出している。脳は複雑な器官で一つの部位のみで動作が発生するのではなく、脳を構成する各器官との連動によって動作を成立させている。不幸にも脳の一部が欠損した場合も、周辺の器官がその役割を代替しにかかるという事も判っている。科学的、医学的にも最新技術を駆使すれば脳の機能のどこが反応したり連動するかはわかってきているが、前述した様な欠損を補う仕組み(可塑性)についても徐々に一層クリアになってはいくだろう。 ただ人の行動がどの様にして起こるかについて、その原因や目的をはっきりと「これです」と定義して型にはめることは難しい。何故なら人の意思や行動の背景には様々な因子があって、社会、環境、人そのものの生物としての動機、その瞬間の周囲の状況などあらゆる要因が複雑に絡み合った末の行為であるから、コンピュータ技術が過去の膨大なデータからパターンを導き出したとしても、相当程度に平均化された「人らしい」結果(行動や言葉)をもたらしても、それ以上のスピードで世の中は変わっている、というか動いている。そう考えると、今や生成AIがある社会が現在地点になっており、それを前提とした新しい社会に作り変えていくのも、人の脳が環境適応すべく作り上げていく新しい結果になる。コンピュータの世界が処理能力をいくら上げてもそれを踏まえた脳の存在があり続ける限りAIが脳に追いつく事は無いと思う。 話は逸れたが、本書はそうした脳科学の進歩の過程を紹介しながらも、その危険性とリスクを低減する方法について書かれている。使えるべきところは大いに活用すべきだが、それが本来人の持つ人らしさの破壊に繋がったり、分かりやすく言えば権利の侵害をもたらすリスクは大きく、何らかの防護策(例えば法整備など)の設置が急務であることを教えてくれる。 本書構成は前半に哲学的な記述や、科学の話が多く出てくるので、新書としてさっと読むにはやや難解かと思いきや、筆者の付け加える例えや具体例が非常に分かりやすく、前半である程度の脳科学の前提知識が身についてくる。中盤はいよいよ人の心とはそもそも何かについて様々な論争を挙げて迫っていくが、その明確な回答は読者自身に考えさせる様な親切な(読み手の目的意識にもよるか?)書き方になっている。そして後半の結論部分は自分が急造の脳科学者や哲学者になったかの様な持論を持ちつつ、白熱した議論に参加している様な感覚に陥り、最後のページを閉じた後にはやや興奮気味の自分がいる事に気づく。わからないからこそ知りたい、わからないからこそ面白い。
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言葉や感情を成り立たせているのは社会か、それとも個人か、というあたりは脳科学とはあまり関係ないような気がしてならない。 あらゆる問題の根源を自身の内面に求める心理主義化に陥ってるという指摘は妥当だが、世の中はその後「脳科学化」に陥ってるともいえなくもない。 章が進むにつれて脳...
言葉や感情を成り立たせているのは社会か、それとも個人か、というあたりは脳科学とはあまり関係ないような気がしてならない。 あらゆる問題の根源を自身の内面に求める心理主義化に陥ってるという指摘は妥当だが、世の中はその後「脳科学化」に陥ってるともいえなくもない。 章が進むにつれて脳科学とは離れていくのだけど、自由意志とリベットの実験についての考察は読む価値はあると思う。
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第2章より。 <1>〜19世紀中 ・ヒポクラテス…心は脳にある ・アリストテレス…心は心臓に ・魂は全身の感覚器に散在…ロッツェ、ルイス(19C) <2>〜19世紀末 1 相互作用説:心身をそれぞれ独立した実体としたうえで因果関係あり、と考える…デカルト:「心の座は脳である」 2...
第2章より。 <1>〜19世紀中 ・ヒポクラテス…心は脳にある ・アリストテレス…心は心臓に ・魂は全身の感覚器に散在…ロッツェ、ルイス(19C) <2>〜19世紀末 1 相互作用説:心身をそれぞれ独立した実体としたうえで因果関係あり、と考える…デカルト:「心の座は脳である」 2 平行論:心身間に対応関係はあるが因果関係はない…マールブランシュ、ライプニッツ 3 唯物論:ホッブズ(17C)、ドルバック、ラ・メトリ(18C)、フォイエルバッハ、マルクス(19C) 4 唯心論:バークリ、ヘーゲル、ベルクソン <3>1940年代…「行動」に注目して心身二元論を克服する試み ・メルロ=ポンティ「行動の構造」 ・ギルバート・ライル「心の概念」 <4>20世紀後半〜 ・認知科学、脳科学…古典的計算主義/コネクショニズム ・90年代中ごろ以降→「拡張した心(extended mind)」…心は、脳も含めた身体の内部器官のみならず、その全身の振る舞い、そして人間が作り出した造作物において実現している
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