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実母・淫溺の軌跡 フランス書院文庫
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実母・淫溺の軌跡 フランス書院文庫

中野香織(著者)

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実母・淫溺の軌跡 フランス書院文庫

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 フランス書院
発売年月日 1992/06/25
JAN 9784829604397

実母・淫溺の軌跡

¥275

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2015/11/26

重いテーマに官能フィルターを通してピュアに描いた感動の1冊

フランス書院文庫では本作限りの作者が同姓同名の服飾史家にしてエッセイストと同じ女史なのかは不明だが、生と死という重いテーマに取り組んだ異色の作品と言わねばならない。むしろ、このテーマでデビューした官能小説家が次に何を題材にすれば良いのかと考えると検討がつかず、その意味では本作限り...

フランス書院文庫では本作限りの作者が同姓同名の服飾史家にしてエッセイストと同じ女史なのかは不明だが、生と死という重いテーマに取り組んだ異色の作品と言わねばならない。むしろ、このテーマでデビューした官能小説家が次に何を題材にすれば良いのかと考えると検討がつかず、その意味では本作限りの1冊入魂だったのかもしれないという憶測も働く。そんな想いが込められたかのような、溺愛する息子が不治の病に冒され、余命幾ばくもないと知った実母の切実な感情が官能的にしたためられた作品である。 メインヒロインはモデル経験もあるファッションデザイナーの【美奈子】36歳。予想に反して華やかで派手な印象のある女性像だが、彼女には17歳の息子【貴広】がいて今は長期入院中。定期的に病院へ通う生活だが、再婚を考えている【東堂】という男もいる。 また、貴広の入院先では28歳の看護師【理代子】が献身的に看護してくれるのだが、彼女にも貴広と同年の弟【光雄】がいた……こちらは過去形である。この姉弟の関係が美奈子と貴広の母子に影響を与えていく。病名は異なりながら同じく余命僅かだった光雄に対する理代子の、その最期までを過ごした回想は感涙をもたらすものであるのと同時に、患者より先に事実を知る看護師という立場が存分に活かされている。加えて、毎日をすることなしに過ごす患者という男女の性の悩ましさも垣間見られて興味深く、これはそのまま現在の貴広と重なり、理代子に加えて同年代の女性患者である【真友】との関係にも重なっていく。次第に衰えていく肉体に反して元気さを見せるムスコこそが、哀しく、痛々しくもある状況下でも生への渇望として象徴的に存在感を放つのである。 だがしかし、サブヒロイン達は順に母子の元を離れていく。その中にも「死」が分かつ原因になる悲しさが含まれているのだが、最終的に在宅介護の道を選んだ2人に残されていたのは、母の絶大な慈しみに女の欲望が加味される、それでもピュアな官能絵巻に他ならならない。また、年若くも生の終焉を意識せざるを得なくなった貴広の行動は、残りの命をかけて子孫を残そうとする男の本能だったのであろうか、それとも母の元へ還ることだったのであろうか。 衰えていく肉体の具体的な描写には、もしかして作者は似た体験を経ているのでは?とさえ思わせる信憑性すら感じさせるが、本作のテーマに即して読むと(官能描写が控えめで稚拙なこともあって)官能小説であることを思わず忘れそうである。それを補強するかのごとく、実は序盤から卑劣な暴漢が美奈子の前に現れており、無慈悲な凌辱があり、それによって東堂との関係も変化している。これにも終始悩まされる美奈子だが、結末へと繋がる最後の登場が貴広の思わぬ行動を呼び、これだけ生と死を重く捉えながら悪いヤツにはあっさりしていることに矛盾も多少は覚えながら、それでも元気さを取り戻したかのように写る2人の姿には何だか晴れやかな心持ちにもなる。 しかしながら、貴広の行動と2人に訪れるであろう将来を見れば、待っているのは最後の1行にある「闇の世界」なのであろう。

DSK

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