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火星ダーク・バラード ハルキ文庫
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火星ダーク・バラード ハルキ文庫

上田早夕里【著】

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火星ダーク・バラード ハルキ文庫

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 角川春樹事務所
発売年月日 2008/10/18
JAN 9784758433723

火星ダーク・バラード

¥935

商品レビュー

4

38件のお客様レビュー

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2024/07/13

ボリュームのある物語だが、逃げ続けざるを得ない主人公・水島を追って先へ先へと読んでいた。ちょっとくどいかなと感じる部分がところどころあるけれど、登場人物がみんな個性をしっかりもっていてとても面白い。何を考えているか分からないとか、言うことと考えていることが違うとか、そういう裏を読...

ボリュームのある物語だが、逃げ続けざるを得ない主人公・水島を追って先へ先へと読んでいた。ちょっとくどいかなと感じる部分がところどころあるけれど、登場人物がみんな個性をしっかりもっていてとても面白い。何を考えているか分からないとか、言うことと考えていることが違うとか、そういう裏を読み合う展開じゃないのも私には良かった。 犯罪者を捕らえ続ければいつかは世の中から犯罪が消えるのか?いまの人類の性格を矯正しようとするより、そもそも攻撃的な考えを持ち得ない人間をデザインする方が効果的だ――というグレアムの主張はこの先、実際に出てくるように思う。 「人類が、いまの感覚のままで宇宙進出を続ければ、やがて、あらゆる場所が地球化するだろう。――どんなに平和的な文化も文明も、見る影もなく色褪せて破壊されていくだけだ」 この予言にNOと言える気がしない。かといって、その"今の人類"の欲や考えにもとづいて人間の遺伝子をデザインすることが、目指すべき解だとも思えない。 技術はどんどん進んでいる今のうちから、いろんな角度から議論されるべきなんだろうなぁ。実際に人間が作られてから「時間をかけて話し合う」という頼りない世論に落ち着いてしまう前に。 暖炉の前の椅子から立って「外の闇を見張らずにはいられない」という水島の哀切な生き方がくるしい。かたい壁の向こうに取り残された彼の優しさを、アデリーンは感じ取って惹かれていくけれど、いろいろな事実を見聞きしていくうちに彼女自身も心の中に壁ができていくという感じがする。自分に望んでもいない能力をもたらし、レールの上に乗せてきた周囲の人々を拒絶し、自分のことも見捨てようとするアデリーン。しかし水島のためなら行動する、それは果たして愛なのか、と思う。自分に対する処理しきれない肯定否定の気持ちをそらすために、愛情が使われているのかもしれない。でも、それを責めるべきではないのだ・・・ 「それでも、彼女を止めねばならない。彼女を、犠牲の子羊にするわけにはいかないのだ。」 はっきりとは先の見えないエンディングに、ふたりの哀しみがにじんでいる。

Posted by ブクログ

2024/05/10

これは面白い!! 久々のヒットです。 世界観、キャラ、ちょっとミステリーでハードボイルド。さらに火星が舞台の近未来SF。 私の好みが詰まっている小説でした。 主人公の年齢設定を、文庫版では上げた、と「あとがき」に書いてありましたが、大成功だと思います。 文庫版と単行本はラスト...

これは面白い!! 久々のヒットです。 世界観、キャラ、ちょっとミステリーでハードボイルド。さらに火星が舞台の近未来SF。 私の好みが詰まっている小説でした。 主人公の年齢設定を、文庫版では上げた、と「あとがき」に書いてありましたが、大成功だと思います。 文庫版と単行本はラストが違うようなので、できれば単行本も読んでみたい。

Posted by ブクログ

2024/03/23
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

上田早夕里のデビュー作ということで読んでみた。 手に取ってみると「分厚い・・」という感想だったが、中だるみすることなく読み切ることができた。特に終盤は息をつかせぬ緊迫感で、興奮の中一気に読み終えた。 これまで読んだオーシャンクロニクルシリーズ絡みの短編集で著者の感覚の鋭さは体感済みだが、デビュー作でもその感覚はしっかりと感じることができた。 文章や登場人物の心情の部分は(後年の作品と比較すると)荒削りだと感じるが、SFとしての設定は最初の作品であっても考え込まれていてすばらしい。 火星のテラフォーミングに関しては、私が思い描くような旧来の方法は時間がかかりすぎて現実的では無いと切り捨て、火星に特有の深い峡谷に"蓋をする"やり方で早期の移住を可能にしているアイディアは秀逸だ。それでいて、時間はかかるが惑星全域を利用可能にできる旧来型のテラフォーミングも併せて行っているようであるというのももっともらしい。 現代から断絶した理想・空想論ではなく、現代科学技術・経済からの積み上げで未来を描く彼女の手法は非常にリアリスティックなSFといえる。 最終盤の伏線ともなる『軌道エレベータとその側を通るフォボスの観光利用』という設定も、"現在から地続きの未来"にいかにもあり得そうな発想だと感心した。 このフォボスについての部分はその設定だけではなく文章も上手く、近未来火星の世界観を表すフレーバーのようにサラリと、しかし印象に残るような描写がなされている。 この設定部分への導入も自然で、その後は本文中で触れることもなかったのでただの背景だと思って読み進めていたのだが、物語の大詰めでコレが急激に意味を持ってくる場面では「背景だと思っていた絵が舞台装置であったのか!」と気付いた時のような鳥肌(驚き)と新鮮な面白さを感じた。 著者の後続の作品でも見られる、感情移入をしている主要人物の唐突で救いの少ない死は今作でもすでに現れている。 神月璃奈は、強いヒロイン・相棒として思い入れが生じそうな瞬間を狙ったように強制的に退場し、以降は徐々に役割をフェードアウトしながら物語に影響を与え続ける。親友シャーミアンもアデリーン(= 主人公サイド、読者)の目に触れない部分で急激に死んだも同然の状態とされながら、それでも要所要所でアデリーンの枷となり苛む。 この著者の作品は主要な人物ですら不意に死ぬので、主人公達ですら最後(あるいは片方は途中で)には死ぬのではないかとハラハラさせられる。 登場人物達と同じように物語自体もハッピーエンドでは終わらない。 一応の解決、少なくともバッドエンドではないが、主人公サイドの人物達は重い物を背負い、暗い雰囲気も多分に残しながらそれでも大小の光が見える形で幕が下りる。 敵方のグレアムもただの悪人ではなく、否定しがたい正義(大義?)を心に持ち、薄情ながらも愛情も持っている。最終盤では悪党としての影がやや薄くなりながらも最後まで役割をこなし、エピローグまで己の立場をブレずに貫いている。 後書きや解説によるとエピローグの部分が大きく加筆され、内容や設定も改編されているとのことだが、水島の年齢を引き上げ、別れ(飛び立つ若者と囚われ続ける老人?)を強調することで物語以降のアデリーンとの恋愛の可能性を完全に排除したのだろうか。そうだとするならば良い改編だと思う。 解説にもあるが、"ハードボイルド"な主人公なので、甘い恋愛のエンドは似合わない。 水島の心理は共感できないものもあるが、おっさんになっていく者の悲哀が良く描けている感じがして、この作品だけ読むと「作者は本当に女なのか?」と思ってしまう。 解説も作品への愛を感じる内容で良かった。内容もよくわかっているし、文庫版のみを読んでいる読者向けに(後書きだけでは内容がよくわからない)改変した部分を上手くフォローしていたと思う。

Posted by ブクログ

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