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最後のユニコーン ハヤカワ文庫
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 早川書房 |
発売年月日 | 1979/10/15 |
JAN | 9784150200114 |
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最後のユニコーン
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商品レビュー
3.9
15件のお客様レビュー
寡作ながら傑作揃いで…
寡作ながら傑作揃いで知られる作者の第二長編。最後の一頭となったユニコーンが仲間を求めて旅する物語。
文庫OFF
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
最初にこの作品を読んだのは十代の頃、鏡明訳でハヤカワ文庫から出版されていたときだった。『指輪物語』や『ゲド戦記』の洗礼を受けた後で読んだせいもあるが、かなり地味で、体感温度の低いファンタジー作品という印象を受けた。もっと正直に言えば、少しつまらないなあ、と思ったのだ。 主人公は、とある森にただ一頭住み着いたユニコーン。彼女は自分以外の仲間がすべて「赤い雄牛」に狩りたてられて地上から姿を消したことを知る。彼女が仲間を探索する旅に、魔法を使えない魔術師のシュメンドリック、盗賊団にいた女モリー・グルーも参加。やがて一行は「赤い雄牛」を擁するハガード王の城へと辿り着く……。 ユニコーンその他の幻獣たちの造形は表現こそ詩的だが型通りだし、ハガードや「赤い雄牛」に象徴される悪や権力も非常に抽象的だ。しかし、無能な魔術師シュメンドリックが、ついに存在の内奥から湧き上がる真の「魔術」に満たされる場面は深く心に残っていた。二十代になってから文庫を再読してみたのもそのためだ。すると以前は見えなかった魅力的な箇所が次々見つかった。見世物小屋に捕らわれたハルピュイアの「本物」ゆえの恐ろしさ。それに固執する興業主フォルトゥーナの愚かしさ、切なさ。ただの小うるさい登場人物だったはずのモリーが、自分の作った料理を食べた人間を悪く思えなくなる性質だという点にも目が留まり、急に彼女が母性を帯びた好ましい存在になったりした。そして三十代の今、手に取った本書は全面新訳、しかも完全版。その上、本編の後日譚である短編「ふたつの心臓」が併録されている。この短編では年齢を重ねた後の主要登場人物たちに再会することができ、同窓会のような気分を味わった。また、訳者あとがきに抜粋された作者の言葉から、『最後のユニコーン』が「古典的なヨーロッパのフェアリーテールへの愛をこめたパロディ」であり、著者が敬愛する「作家たちに対するオマージュ」であったこともわかった。 若い日に感じたこの作品の体感温度の低さは、ここに由来していたのかと納得した。読む者の身をも焦がすような刺激的な創作世界でこそないが、透明感を帯びた端正な物語世界は新訳でも変わらない。 まさにユニコーンそのもののような作品である。
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これは一体どういう話なんだろう。メタ・ファンタジーとでも言うべきか。 筋としては割とファンタジーの王道で、世界の森からユニコーンがいなくなってしまったため、ただ一匹だけ残っていたユニコーンがどこかに消えてしまった仲間のユニコーンを探しにいく、という話。途中、魔女や魔術師、野盗、...
これは一体どういう話なんだろう。メタ・ファンタジーとでも言うべきか。 筋としては割とファンタジーの王道で、世界の森からユニコーンがいなくなってしまったため、ただ一匹だけ残っていたユニコーンがどこかに消えてしまった仲間のユニコーンを探しにいく、という話。途中、魔女や魔術師、野盗、王子、意地の悪い王などが現れ、ユニコーンも人間の女性に変化するなどし、いろいろあり、最後は大団円。 興味深いのは、登場人物たちがファンタジーの文法に自覚的なところで、これが作品に独特の味わいを与えている。例えば、王子は自分が幻想文学における登場人物の一類型としての王子であることを作中で自覚しており、彼は毎週のように魔女や怪物と戦いに行ってはその労苦をぼやいている。 しかし、だからといって、このメタ・ファンタジーとしての要素が物語の筋に大きな影響を与えているという点は見受けられなかった。そのため、物語としてはいくらかまとまりに欠ける。作者の伝えたいであろう主題も(あればの話だが)よくわからない。 強いて言えば、記号とその計算に堕している多くの幻想文学に対して、記号的な登場人物を持ち出してそれを皮肉ってみせ、さらにそれを実在しうる、一つの人格として顕現させる術を示してみせた、というところだろうか。 あんまりごちゃごちゃ考えるような話ではないのかも。
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