幕末の外交官 森山栄之助

江越弘人(著者)

• 販売会社／発売会社: 地方小出版流通センター
• 発売年月日: 2008/06/01
• JAN: 9784863290037

商品レビュー

2013/11/16

　本書は、現在ではほとんど知られていない幕末の外交官「森山栄之助」という人物についての研究書である。
　幕末の諸外国の記録には必ず登場するという「森山栄之助」が、どのような人物であり、何を行い、そしてなぜ歴史の中に埋もれ忘れられていったのかの本書の考察は実に興味深く思えた。
　本書によると「森山栄之助」は、「日米和親条約」をはじめとした諸外国との条約の締結にあたって「主席通訳官」としてそのほとんどに関わっていたという。
　その条約締結にいたる本書の詳細な考察は、一般に考えられていたように幕府の対応が無能・無策だったわけではなく、当時の状況の中では最善と思われる対応を必死になって志向していたことがよくわかる思いがした。
　本書では「森山栄之助」をはじめとした幕府の外交官の業績が忘れ去られた理由として、「不平等条約」を結んだことや「貨幣交換比率」の無知によって金の流出を招いたことによる幕臣たちへの低い評価があると考察している。
　しかし、当時の交渉の詳細な経過を読むとその評価はちょっと過酷であるとの思いを持った。そして江戸幕府という当時の社会システムの限界は、幕臣達がいささかの能力を発揮したぐらいで乗り越えられるものではないという歴史の現実が見えるように思えた。
　ただ本書での「森山栄之助」のキャラは、今ひとつ見えてこない。
　著者は「見えない森山栄之助像」と語っているが、わざわざ不足する得られない情報を強調するよりも、本人の「日記」や諸外国の外交官の「資料」・当時の社会制度や常識などから、人物像を浮かび上がらせることはできなかったのかと思った。
　それにしても、幕末の過渡期に奮戦し、明治には敗者と評価された人物は哀れである。これだけの業績と能力を持った人物が歴史の闇にうもれてしまうのだから。
　本書の読後感があまりよくない理由に「森山栄之助」の後半の人生がよく見えないことがある。やはり人物像を追いかける場合は、成功にしろ失敗にしろ、その人生が完結する姿を誰もが見たいものだと思う。本書はその点がちょっと物足りない。

2009/12/08

日本史特講4参考文献。
名前も聞いたことのない人だったけど、彼の功績はもっと称えられるべきものだと思う！
幕末に結ばれた日米和親条約及び、日米修好通商条約に対する見方が変わったように思う。
高校で学ぶ歴史は事実だけだけど、大学や本ではさまざまな人が関わった様子が鮮明に見えるからおもしろい。
やっぱり日本はまだまだ、藩閥政府視点の日本の歴史に惑わされている。
いろんな視点から物事を見て、判断することが大事ですな。