李登輝の実践哲学 五十時間の対話

井尻秀憲【著】

• 販売会社／発売会社: ミネルヴァ書房
• 発売年月日: 2008/09/10
• JAN: 9784623052158

商品レビュー

2013/03/03

国際政治学、東アジア国際関係論を専門とする学者である著者が、李登輝氏へのインタビューをもとに書きおこした一冊です。

李登輝氏というと、台湾総統として台湾を平和的に民主化した指導者として知られるが、日本統治時代の台湾に生まれ日本の教育を受け、帝国陸軍にも入隊し日本人として大東亜戦争を経験しています。
李登輝氏自身も、「21歳までは日本人であった」と語り、日本人としてのご自身のバックグラウンドに常に言及しています。

哲人政治家、農業政治家と呼ばれ、世界でも稀な数多くの実績を残したそのプラグマティズムな実践手腕との「思想・倫理と実践との両立」が他に類を見ない特徴だと考えます。

【本書抜粋 李登輝氏】
現実のなかにわれわれの理想を発見する。天国をわれわれの現実の社会に見つけ出す。これがもっとも大切なことです。
そして人生はすべて肯定的な態度で人々のために働く。決して自分のため、私利私欲のためではない。
（中略）つまり、ここでは単なる「思弁的渦巻き」ではなく、具体的な「実践」が必要であり、その「実践」が結果として上手くいったかどうかで歴史的評価が決まる。
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本書は、読むものに高い教養を要求します。政治での実践をベースにしているため、大変わかり易い箇所もありながらも、本質的な理解に至るにはとても私の今の教養レベルではおぼつかないのが正直なところです。

特に李登輝氏の思想の中核に迫ろうとする第Ⅰ部「実践哲学とは何か」は、学者である著者との対話であることもあり、その難易度は高いと感じました。

李登輝氏の思想・哲学・実践に触れるには、本書よりも以下の李登輝氏の著書が適切なようにも思います。
私の教養レベルではいずれも難しいことに変わりはないですが、本書よりはいくらか理解しやすいかと。いずれも名著です。
・台湾の主張
・武士道解題
・最高指導者の条件
・台湾大震災救災日記

李登輝氏の著書・関連する書籍・メッセージに触れるたびに、自分の教養のなさに愕然とします。基本的な古典にさえきちんと触れていない。
まだまだ人生の楽しみは尽きないようです（笑）

【本書抜粋 李登輝氏】
日本は、非常に精神性の高い文化をもっている。非常に高尚な「情緒の形」というものをもっている。日本がもっているものが、外国ではあまり知られていない。（中略）日本人のもつ「情緒と形」、日本人が自然との調和において、非常にバランスのとれた生活をやっていること。（中略）日本人は口では言わないが、自然と行為のなかに「道」を生活のなかに取り入れている。これが日本の精神文化の特徴なのです。
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