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ノック人とツルの森
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 河出書房新社 |
発売年月日 | 2008/08/09 |
JAN | 9784309204956 |
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ノック人とツルの森
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商品レビュー
4.3
7件のお客様レビュー
答えを知るためにはね、いつも質問しなきゃいけないわけじゃないのよ。 これはツル人のエアラがアディーナに言った言葉。 そして、アディーナも何度か口にした言葉。 アディーナは、母親のカーラと1つ年下の弟ポルコと3人で、彼女が「アーデルング・ハウス」と呼ぶ大きな家で暮らしていた...
答えを知るためにはね、いつも質問しなきゃいけないわけじゃないのよ。 これはツル人のエアラがアディーナに言った言葉。 そして、アディーナも何度か口にした言葉。 アディーナは、母親のカーラと1つ年下の弟ポルコと3人で、彼女が「アーデルング・ハウス」と呼ぶ大きな家で暮らしていた。手入れの行き届いた芝生と茂みと木々から続くレンガ造りの素敵な家に。 ただ、その家は一歩中に足を踏み入れてみれば、それはゴミが入った段ボールが所狭しと積み上げられ、ろくに掃除もしない恐ろしいゴミ屋敷だった。 小学生になったアディーナは、学校に通うことになる。そんな彼女に母親は言う。 「ノック人に近づいてはダメよ」 ノック人って何?と最初は思った。実際にドイツにはそういう人種がいるのかと。でもそうじゃなかった。ノック人とは家族3人以外の人間のことだ。 ノック人は家のドアをノックする。心の扉をノックする。中に入り込み、家族をバラバラにしてしまうとカーラは考えている。 この物語は終始アディーナの目線で語られているので、彼女が見たり聞いたりすること以外の事実を私たちは知ることができない。 おそらく彼女の母親は、夫の死をきっかけにおかしくなってしまったのだろうと推察される。 汚さに耐えかねて、アディーナは何度も母親に家を片付けるようお願いするが、返事ばかりでやってくれない。 だから彼女は毎晩夜中に起きて、遠くのゴミ捨て場までゴミを捨てに行ったりする。それなのに母親がまたそれ以上のゴミを拾ってきては、せっせと家に運び込んでしまう。 本当に酷い環境だ。 暖房も水道も止められて、家の中のゴミの隙間で寒さに震え、部屋の中で排泄をし、腐った固いパンを食べ、学校に行けばクサいと暴力と苛めにあう。 いいことなんてひとつもないのに、アディーナは完全なる絶望はしない。それに、近所に住むツル人のエアラの存在が彼女の大きな支えとなってくれる。 アディーナはとても賢い子だ。 正しい考えができて、素直でやさしい。頑張り屋で決して挫けない。 物語は中盤にかけて悲惨さを増すが、アディーナが語る物語だったから、わたしは途中で挫けずに読み続けることが出来たと思う。この女の子の行く末が心配で堪らず、投げ出すことはできなかった。 後半の爽快さは、それまでの鬱憤を晴らすかのようだった。これからはノック人として、ノック人の世界で元気に生きて欲しいと思う。
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個人的には、主人公の女の子と彼女を男の子の集団の関係が興味深かった。陰惨な苛めを繰り返す側にも、自ら進んで苛められるようにする側の関係。 どちら側も問題を抱えている。その問題を解決するためには、一度そういう関係自体を壊す事件が必要なのかもしれない。そんな事件が起こったところで...
個人的には、主人公の女の子と彼女を男の子の集団の関係が興味深かった。陰惨な苛めを繰り返す側にも、自ら進んで苛められるようにする側の関係。 どちら側も問題を抱えている。その問題を解決するためには、一度そういう関係自体を壊す事件が必要なのかもしれない。そんな事件が起こったところで必ずしも問題が解決するわけではないかもしれないけど、少なくとも苛めたり苛められたりする関係は一旦清算される。あとは、どうなるか。 それはお互いが自分のこと・他人のことをどう思うかによるのだろう。そういう事を無視しないで、心の中に留めて感じ直してみる。そこからでないと、何もかも始まらない。 私たちは保護区で大事に育てられるツルではない。ゴミのような人間関係に埋もれたり、息の出来ない水の中に沈みながら生きているのだ。読後にそういうことを思ったりした。
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周りを知らなければ、どんな不可解な生活も、それが当たり前の生活でしかない。だから、物語の始め、アディーナはただただ、幸せそうだ。母が溜め込む不用品たちに居場所を占領され、洗濯された服もなく、お風呂にも入れず、満足な食べ物を与えられることがなくとも。 けれど、学校へ通うようになり、...
周りを知らなければ、どんな不可解な生活も、それが当たり前の生活でしかない。だから、物語の始め、アディーナはただただ、幸せそうだ。母が溜め込む不用品たちに居場所を占領され、洗濯された服もなく、お風呂にも入れず、満足な食べ物を与えられることがなくとも。 けれど、学校へ通うようになり、母が「ノック人」と呼ぶ、周囲の人たちと少しずつかかわるようになり、そして、弟がゴミの山に埋もれて命を落とすうち、自分たちの生活が、いかに異様なものなのか、嫌でも気づかなければならない。 それでも、彼女が母に期待しつづける気持ちがせつなくてならない。 独特の表現が、ネグレクトやいじめを語っていながら、じめじめしたものを感じさせず、装釘の酒井駒子さんの絵がとても似合っている。
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