浪人若殿 山手樹一郎長編時代小説全集 45 春陽文庫45

山手樹一郎(著者)

• 販売会社／発売会社: 春陽堂書店
• 発売年月日: 1977/11/10
• JAN: 9784394101451

商品レビュー

2024/11/27

香取礼三郎は、六万石の小大名である松平忠之の弟ですが、家老の宇田川外記の策謀により、藩を脱出して浪人に身をやつしています。外記は、酒と女に溺れる忠之を亡き者にして、身内の新三郎を当主にしようと画策しており、配下の鐘巻弥次郎の手を借りて、目の上のこぶである礼三郎を襲撃させます。一方礼三郎は、旅の途上で岡っ引きの娘であるお吟と知りあい、彼女をはじめとする協力者たちとともに、お家騒動の解決を図ろうとします。

著者の作品によく見られる、お家騒動を題材としたストーリーですが、敵の黒幕である外記にはたいした策略もなく、実行部隊長というべき弥次郎も当主の奥方であるお京の方に夢中でみすみす礼三郎たちに後れをとるなど、お粗末な振る舞いがめだちます。唯一伊豆和四郎だけが、胆力のあるキャラクター像にえがかれていますが、後手後手の対応に終始している印象はいなめません。

一方で礼三郎も、弥次郎の挑発に乗せられて井戸に落ちてしまうなど、主人公としてはいささかたよりなく、著者の作品らしいスーパーヒーローの活躍を期待したのですが、率直にいって不満がつのる内容でした。