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東京漂流 朝日文庫
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 朝日新聞出版 |
発売年月日 | 2003/09/01 |
JAN | 9784022643186 |
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東京漂流
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商品レビュー
3.8
5件のお客様レビュー
いやー、最高の読書体験であった。 あちこちで「伝説の」的な扱いをされていることがよくわかった。 「朝日文庫」所収というのが信じられない(オリジナルの単行本は、「情報センター出版局」で方向性的には納得(笑))。私はオリジナルで読んだが、文庫は「ひょっとすると」一部改変されていてもお...
いやー、最高の読書体験であった。 あちこちで「伝説の」的な扱いをされていることがよくわかった。 「朝日文庫」所収というのが信じられない(オリジナルの単行本は、「情報センター出版局」で方向性的には納得(笑))。私はオリジナルで読んだが、文庫は「ひょっとすると」一部改変されていてもおかしくない(そのくらい朝日的良心とは相入れない本)。 経済繁栄が爛熟の極みに向かいつつあった1980年代初頭の日本、しかも東京において、人々は「不都合」なものを隠蔽してきた。 不都合、とは私の言葉で端的に言うならば「死」あるいはその気配のこと。そして、それにまつわるグロテスクさ、臭い。著者は混沌のアジア放浪、そして幼い日々を過ごした高度成長直前期の地方旅館(美しくもはかない、そして決して豊かではない日本)で育んだ鋭すぎる感受性で白日のもとにさらけ出す。 冒頭の「豚は夜運べ」からいきなり突き刺さってくる。 本書の重要な一部は、著者が写真週刊誌「Focus」に連載した写真と記事がもとになっている。殺人事件の現場、遺体、東京に当時残っていた野犬とその駆除など、全てではないにせよあの雑誌が単なるのぞき見趣味ではない孤高の発信を続けていたことも読み取れる(そしてその連載はある事件で打ち切られる)。 呉智英が、この時代の清潔志向を「デオドラント文化」と呼んで、それをイコールある種の隠ぺいと喝破していたが、それと通底するものを感じる。 日本を「単一民族国家」と表現するなど、今日的に見ればあれこれの指摘はありえるが、逆に言えばこれほどの人が例えばアイヌを集中的に取材すれば、現代の表面的な多様性礼賛とは格の違う文章を書いたはず。 1980年代日本の記録として必読以外の何物でもない。
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著者は芝浦に住んでいる、豚は夜運べ、FOCUS連載、ニンゲンは犬に食われるほど自由だ、繰り返し言及される事件、80年代も今も変わらないことに驚く
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希薄になった家族関係、物質的な欲望の飽和などは今となっては聞き飽きた話ではあるが、これが三十年も前に書かれたものだと思うと著者の鋭さを感じずにはいられない。 殺人犯に怒号を浴びせながら写真を撮るカメラマン。森達也さんが指摘するようなマスコミの崩壊は八十年代から既に始まっていた。...
希薄になった家族関係、物質的な欲望の飽和などは今となっては聞き飽きた話ではあるが、これが三十年も前に書かれたものだと思うと著者の鋭さを感じずにはいられない。 殺人犯に怒号を浴びせながら写真を撮るカメラマン。森達也さんが指摘するようなマスコミの崩壊は八十年代から既に始まっていた。 宗教団体に代表されるような、得体のしれない不気味な存在を追い詰めようとする巨大な悪意。そのエネルギーは今も変わらず、むしろ圧倒的に力を増してスケープゴートを探している。 インドで犬に食われる人の屍を写真に収めた作者。「人間は犬に食われるくらい自由だ」と自然の中の死のありかたを肯定しつつも「犬のように自由に生きたい」と犬を羨んだり耽溺する甘さがないのがいい。最後は「私の鼻はおまえのより百万倍退化しているけど、私の頭はおまえより、ちっとは巧妙だ。あんなにぶざまに、ベロベロに腐り切った肉なんか食らったりはしない。都市の殺意をかいくぐって、おまえより、ずっとたくましく、巧妙にやっていくよ」と人間として生きる覚悟を宣言するところが心に残った。
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