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海軍と日本
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 中央公論新社 |
発売年月日 | 1981/11/20 |
JAN | 9784121006325 |
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商品レビュー
4.3
5件のお客様レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
1981年刊。著者は東北大学法学部教授(敗戦時海軍中尉)。 「近代的戦争を行う職業軍人に求められるのは、武人的気質ではなく、その勇敢さや武人的ロマンティシズム(暴力を如何に振るうか)を制御できる冷徹な情勢判断と、付与された任務に対する理解と順守」である。 かような人材の欠乏がアジア・太平洋戦争期の日本海軍の実情であり、ひいては敗戦を招いた。 かかる至極当然の発想と視点を基軸にして、海軍の在り方を多面的に解説する書だ。 貴重な人命と資源を費やす以上、勝ち戦ですら厳しい分析を為すべき中、敗北であれば猶更である。そういう意味で、本書の日本海軍への厳しい視座と指摘を見れば、まともな検討書に値すると考えられる。 記述内容には種々あるものの、まとめとしては、①第一次世界大戦の戦訓を真剣に検討したのか、②革新や改革は、自己と先人の無謬性の否定に始まることを理解できていないのではないか、③政治と外交は種々の妥協の産物とその積み重ねでしかないことを理解していない。④軍備や軍事行動も政治や外交の一部門でしかない点を理解していない。辺りか。 一方、個人的な新奇事項は次のとおり。 ⑴戦間期の、潜水艦・航空機に関する独からの技術供与。日独海軍交流の端緒と英からの離脱。⑵海軍の南進論の系譜。⑶さほど生産性は高くないとの零式への評。⑷陸幼→陸大教育の典型的悪例として佐藤賢了将軍の長演説。具体的には、要点を詳らかにできない意味での能力欠如に加え、声のでかさに長舌の弊と、沈思黙考の不足。⑸海軍ですら、昭和期になるにつれ語学と国際法の軽視傾向。⑹海軍における人材育成目的の予算は米国の五分の一。まさに現在の大学教育を彷彿とさせる事情か。 疑問点として、ⅰ)海軍の士官・将校の合理性・理数系思考の重視と人文科学・政治への忌避を言うが、果たして信に合理的か?。どの範囲での合理性か?。ⅱ)実証的・考究的の意であれば、著者が海軍批判として挙げる大艦巨砲主義の蔓延という誤謬の認識が関係者に広がるはず。 なお、現代の高等教育機関、殊に防衛大学校において、他国の陸海の対立とその止揚、その方法論。あるいは軍制の特徴とその長短など現在はもとより史的に解読する研究者がいるのかな?。 戦術や戦略(ここには、当然外交を含むが)だけでは駄目なことが本書から伝わる。 さて、対米敗戦を予見し、戦前発禁処分を受けた「興亡の此の一戦」著者の水野広徳元海軍大佐を再想起させられた書である。
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「帝国海軍を今日において保全すること能わざりしは、吾人千載の恨事にして慙愧に堪えざるところなり」という最後の海相米内光正が述べた海軍解散の辞というものを初めて知った。本書の冒頭に唐突に始まる解散の辞は、おそらく当時海軍中尉だった筆者に深く刻まれた言葉であったことだろう。 198...
「帝国海軍を今日において保全すること能わざりしは、吾人千載の恨事にして慙愧に堪えざるところなり」という最後の海相米内光正が述べた海軍解散の辞というものを初めて知った。本書の冒頭に唐突に始まる解散の辞は、おそらく当時海軍中尉だった筆者に深く刻まれた言葉であったことだろう。 1981年初版の本書では、現在において比較的に通説となっているであろう海軍の体質批判が多々ある。たとえば、建前上は国政に不干渉の姿勢をとりつつもロンドン軍縮のときのように政党を使ったり統帥権を持ち出して間接的に影響力を行使してくるとか、スマートぶって陸軍の暴走を止めようとしなかったとか。戦後の軍部解釈の大きな見方であった陸軍悪玉、海軍善玉の風潮を批判している。 海軍の欺瞞のひとつは、海軍が日米開戦を避けたかったのであれば、どうして陸軍の大陸進出や国政干渉に異議を述べなかったかということだと思う。敵をつくることを避け、米英と戦わば必負とも言えず、自身で築いた干城に安住していたと見られても仕方がないといえる。筆者は海軍の軍人には英国流の貴族的教育の影響があったなど、様々分析を凝らしている。 また、戦術的な問題点も実例を挙げて描かれている。よく言う大艦巨砲主義に凝り固まっていて、航空戦力や対潜能力や通商破壊について疎かったなど。比較的によくあるというか、ステレオタイプな批判であるが、国力の小さきが故に艦隊決戦で即決を望み、補助兵力を頼み、シーレーン防衛を後回しにせざるを得なかったというのが今日的な見方なのかなと思う。最後の3ページにある海軍中将のインタビューで「第一次大戦後の海軍における教育はヨーロッパの戦訓の吸収に性急で…」とあるように、近代戦の理解はあったのだと思う。その理解のもとで、なぜあのような布陣で海軍が日米開戦に臨まなければならなかったのかという視点が要請されるのだと思う。
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海軍中尉で終戦を迎えた著者が帝国海軍について論じる。初級の士官とはいえ内輪の人間として厳しい批判も。 暴力の管理者としての役割の大きい近代の職業軍人は古典的武人と違って冷徹な情勢判断や自らの任務の明確な理解といった高度の平凡性が求められるとの指摘。 戦前の日本の軍人は総力戦につい...
海軍中尉で終戦を迎えた著者が帝国海軍について論じる。初級の士官とはいえ内輪の人間として厳しい批判も。 暴力の管理者としての役割の大きい近代の職業軍人は古典的武人と違って冷徹な情勢判断や自らの任務の明確な理解といった高度の平凡性が求められるとの指摘。 戦前の日本の軍人は総力戦について真に理解しきれていなかった。海戦要務令の聖典化。勝ったと思うとさっさと引き揚げる淡白さ。デモクラチックな陸軍に比べ志願兵が多い職場環境であり、僻地で貴族教育を受けた海軍士官の根無し草の国際主義。親英から反英に至る流れ。海軍善玉論が一般化されてるが、実際は泥をかぶる覚悟に欠けて陸軍を抑えることができなかった事実など?
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