能の表現

増田正造(著者)

• 販売会社／発売会社: 中央公論新社
• 発売年月日: 1971/08/25
• JAN: 9784121002600

商品レビュー

2023/02/20

能のもつ魅力を「逆説の美学」として規定するとともに、現代の能が直面している問題と、その進むべき道について論じている本です。

著者は、「もっとも動かずにいることが、もっとも強い表現である」ということに、能の逆説的な表現を見ようとしています。そして、動きを減らしていくことで、のこされたものの密度をさらに高め、美に結晶化することが、その魅力の中核にあると考えています。

また、このような観点から、「型」をめぐる考察もなされています。ただし著者は、定められた「型」の通りに動けば能になるという安易な解釈にひとをみちびきかねない危険性がつきまとっていることも指摘しています。「型」においてかえって深い心を表現するためには、「型」に入るとともに「型」から自由になるという逆説が、ここにも認められているように思います。

このほか、「生と死」というテーマを中心に、夢幻能をめぐる考察があり、また全体演劇としての能のありかたが現代においてどのように再生されるべきかという問題が提起されており、能について幅広い観点から考察がおこなわれています。

2007/09/19

増田正造という翁は、自身でDV-camカメラを操りビデオ記録を続ける映像作家でもある。能楽だけではなく、バリ島の芸能習俗にも造詣が深い。[バリ島竜宮説]も唱えている。鯛やヒラメの舞い踊りは能楽のルーツとしてバリ島に残されているという。