ナチズムと大学

山本犬(著者)

• 販売会社／発売会社: 中央公論新社
• 発売年月日: 1985/08/01
• JAN: 9784121007759

商品レビュー

2019/05/30

　ナチスと大学について、題名の通り概説した書籍。幾らかナチ・ドイツや第三帝国関連のある程度の年代以降の概説書のたぐいを読んでいくと常識らしいが、「ヒトラー独裁」は一枚岩ではなく、ヒトラーも全てに細部まで最後まで構想を持っていた分野の方が少なく、彼は知識人や、大学教授様、インテリなどを「我が闘争」などで軽蔑しつつ権力を握っても、最終的にナチ国家の目指すべき大学像を明確にできずそれをその方面に意欲的だったローゼンベルクや、ライ、時にはボルマンやその他党の要人や、時流に乗ろうとする大学側の学者なども相乗りして様々な案が提案され一部実行されたが（例えば、ナチ的教義色の強い交差の乱立など）それらは2、3年で元に戻ってしまい、旧く旧弊で権威主義的な所がある当時のドイツの大学を、あのナチスやヒトラー、ローゼンベルクてさえ構想力と徹底性のなさの故に新規な大学像の建設どころか絶対的権力を持ちながらその旧弊な大学を破壊し尽くすこともできぬまま、日和見主義の教員や、「いつまでも続くわけがない」とナチスの時代を自身の内面に逃避してやり過ごしただけの教員も多かった。そして恐るべき戦場、そして戦場外での凄絶な惨劇を見ようとせぬままドイツは敗戦を迎え、ナチ同調者と見られれば片っ端から非ナチ化、教職などからの追放(英米仏ソによって度合いの差が大きい）されても、数年で大学の機能麻痺や冷戦時代の幕開けとともに多くの追放されたはずの教員が復帰し戦前、戦中とほとんど変わらぬ顔ぶれが同じ講義を戦後しばらく続けていた有り様でもあった。
　本書は各方面に短い紙幅で配慮しようとし過ぎた為か煮えきらぬ記述が後半に行くに連れ多くはなるが、関連書籍も多くはない中短いページスウで、1985年とかなり前の本ではあるが、ナチス・ドイツ国家や有名な政治権力者と大学制度の概観をざっと知りたい私のような読者にはなかなかうってつけであった。

2010/10/03

焚書というのがいかにもナチスらしい。
ナチスとニーチェの関係。
ユダヤ人はユダヤ的にしか考えることができない。ユダヤ人がドイツ語で書くとしたら、それは偽りである。ドイツ語を書きながら、非ドイツ的な思考をもつドイツ人は裏切りものである。
ヒトラーの学問観としては、彼は知的教育を望んでいなかった。知識を与えると青年は堕落すると考えていた。
ドイツはこの時期に多くの優秀なユダヤ人、ドイツ人教授を大学から失った。
ドイツ語が重点科目に選ばれるのは必定でドイツ民族のみ入学が許可される大学において、各専門教育と方を並べrてドイツ語研究が無条件に民族政治的ドイツ文化教育の柱として、つまり民族の土壌から息吹のように生えてきたドイツ語による教育とそのドイツ語を創造力豊かな民族的過去の力の仲介者、新しい帝国の未来の偉大な作品への助力者として研究することが推奨された。
大学の授業の前にハイルヒトラーの敬礼がおこなわれていた。
トーマスマンは大学を追放された。
ハイデガーの思索の中で、人間が意味と存在の中心からじりじりおしのけられつつあった不安と危機の時期に、ちょうどその時に、ナチズムがハイデッガーを襲ったのだ。