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またの名をグレイス(下)
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 岩波書店 |
発売年月日 | 2008/05/31 |
JAN | 9784000248068 |
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商品レビュー
4.1
13件のお客様レビュー
カナダ、アメリカ、フランスをはじめ世界的に大人気なカナダ人作家。フェミニズムスタイルが有名だそうですが、こちらの作品が初でした。 アイルランドからカナダへ移民としてわたり、女中として働くグレイス。しかしもう一人の女中ナンシー・モンゴメリと、奉仕先のトマス・キニアの殺人の犯人とさ...
カナダ、アメリカ、フランスをはじめ世界的に大人気なカナダ人作家。フェミニズムスタイルが有名だそうですが、こちらの作品が初でした。 アイルランドからカナダへ移民としてわたり、女中として働くグレイス。しかしもう一人の女中ナンシー・モンゴメリと、奉仕先のトマス・キニアの殺人の犯人とされ、牢獄で静かに過ごす。そんなグレイスと、精神科医ジョーダン先生の間での聞き取りをベースにして現在と過去の記憶が語られる。 こちらはNetflixでも映像化されていて、そちらも観ました。 メアリーと一緒だった幸せな時期から、急展開でとてもいい。 でもやはり映像作品はなかなか原作には勝りません。是非本を読んでから見てほしいです。 因みに「Ithaca, NY」が出てくる作品の一つです。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
最後、グレイスはジョーダンへの手紙に「先生の興味を引きそうなことをうまく考え出すたびに嬉しかった」と語る。 それは嘘とは言わないのか? 誠実そうなジョーダンが後半、グレイスの過去をなぞるかのような行動にでて、アイデンティティーは揺らぎ、違う面を見せる。アトウッドは人間の多面性を突き付ける。 ではグレイスはどうなのか? 健気な薄幸な少女というだけなのか? 人格は分裂するのか? 公開催眠療法、あれはまやかし? それとも真相が明かされた? ますます分からなくなる。 そのわからなさの中に、人間の複雑な内面を垣間見せられた。 当時の(一部は今でも)女性が置かれた状況の理不尽さ、哀しみも伝わってきた。
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上下巻読了。『侍女の物語』が良かったので読む。『侍女の物語』は読んでいて作者の言わんとしていることがストレートに伝わってきたが、こちらは、どこに作者の伝えたいことがあるのかと思いながら読んだ。とはいえやはり巧みな構成の上、ディテールも手抜きなく念入りでリアル、夢中で読めた。 ...
上下巻読了。『侍女の物語』が良かったので読む。『侍女の物語』は読んでいて作者の言わんとしていることがストレートに伝わってきたが、こちらは、どこに作者の伝えたいことがあるのかと思いながら読んだ。とはいえやはり巧みな構成の上、ディテールも手抜きなく念入りでリアル、夢中で読めた。 1843年グレイス・マークスという女中(当時16歳)とジェイムズ・マクダーモットという下男が主人のトマス・キニアと女中頭のナンシー・モンゴメリーを殺したという、カナダでは有名な事件を題材にグレイスの生い立ちから事件、そして釈放までを描いている。ナンシーは主人のキニアの愛人であり、殺害された時妊娠中であったこともあり、大変なスキャンダルとなった。4人の愛憎関係を想像し、グレイスはマクダーモットに脅されただけだ、いやグレイスこそマクダーモットを唆して犯行に至らせた張本人である、など様々な憶測が流れ、当時犯罪者に人権があるはずもなく、あることないことまことしやかに書かれた。 様々なグレイス像から、物語としては「これ」というものを描く、というのが普通のエンタメの作家。しかし、アトウッドはそういうことはしない。そんなに簡単にこの人はこうだと言える?ある面では善人であり、ある面では狡猾で、時代や生まれ育ちや社会規範に縛られて生きている。誰だって一歩間違えば犯罪者にならないとは言えない。自分自身ですら、本当に自分のことを分かっていると言えるのか?そんな問いかけをされたような気がする。 この物語ではメアリー・ホイットニーが『侍女の物語』のモイラのように、主人公の精神を支え、体制に逆らおうとする人物だが、同様に悲劇的な最期を迎える。 グレイスは貧しく、若く、教養もなく、ただひたすら主人に仕え、従うことが正しいことだと思い込もうとしている。自分を殺して生きている。それを長く続けた結果があのジョーダンへの語りに表れている。(作家としての上手さに舌を巻く。) グレイスが最初に奉公した屋敷でメアリーと友情を育み、束の間の幸せを楽しむところが、とても良かった。ジェーン・エアとヘレンを思い出した。ジェーン・エアは苦難を乗り越えてハッピーエンドになっているが、グレイスの人生はそうすっきりとはいかない。皆が幸せだと言ってくれる。しかし、本当に何が幸せなのか?と問う。極めて現代的で、アトウッドが意図するところはそこにあるのではないかと思った。 各章が(グレイスが作る)キルトのパターンの名前になっていて、内容もそれに対応しているのも上手いなあ。 このキルトの柄は「楽園の木」と呼ばれています。これを名づけた人は、意図したよりも正確でした。なぜなら、聖書は木々とはいっていないからです。もともと二本の違う木があったと言われています。「命の木」と「知恵の木」です。でも私は木は一本だけで、「命の木と善悪の実」は同じものと信じます。もし食べたら死にますが、食べなくてもやはり死にます。もし食べたなら、死ぬときが来た時に、骨の髄まで無知ということはないでしょう。P336
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