ちがった空 ハヤカワ文庫

ギャビン・ライアル(著者), 松谷健二(訳者)

• 販売会社／発売会社: 早川書房
• 発売年月日: 1976/10/31
• JAN: 9784150710538

商品レビュー

2024/07/09

1961年発表のギャビン・ライアルのデビュー作。戦争やスパイではなく、オーソドックスな"宝探し"を軸にした冒険活劇だが、空を駆る孤高のパイロットを中心に登場人物たちの造形は鮮やかで、タフな男たちの生き様をしっとりと描くライアルの筆致が美しい。元RAF（イギリス空軍）の肩書きを存分に活かした航空機／飛行描写も流麗で、作者の飛行機乗りとしての矜持／愛をひしひしと感じる作品。本格的な謎解きとしてはイマイチだが、犯人の造形に優れているので強い説得力はある。

2019/04/15

大空を翔る男たちのロマンに彩られた航空冒険小説。1961年発表、しっかりとした骨格を持つライアルのデビュー作で、宝探しというオーソドックスなテーマに挑んでいることからも、新参者としての熱い意気込みが伝わってくる。
第二次大戦が引き金となり英国領から分離独立したインド・パキスタン。その混乱期に失われたインド王室の財宝を巡り、エーゲ海を舞台に争奪戦が展開する。主人公は、雇われパイロットのジャック・クレイ。腕は確かながら、過去の非合法活動がもとで英国国籍を離れている。あとに行動を共にするのは、ライバルであり親友でもある敏腕飛行士ケン・キトソン。この二人の共闘を軸に、宝石を追い求めるアウトローらの姿を描くのだが、酸いも甘いも噛み分ける成熟した男、ライアルならではの筆致で、狡猾な「犯罪」ではなく、爽快な「冒険」としての世界／情景が拡がっていくのは、やはり創作者自身の資質によるものなのだろう。二人を待ち受ける苦いラストは、後の「深夜プラス１」へと繋がるものだが、結局はカネや名誉ではなく、男としての誇りが全てを決定付ける冒険小説本来のエッセンスを凝縮している。
臨場感溢れる飛行シーンも多彩で、冒険小説ファン感涙の名機ダコタＤＣ３や独特なスタイルが魅力のピアッジオは、空を飛ぶことの爽快さと厳しさまで追体験させてくれる。ライアルの初期作品には、紛れもなく芳醇な「浪漫」がある。

2017/06/28

ﾀﾞｺﾀは最高にかっこいい飛行機だし出てくる女は最高に美しいし、言うことなし。でも主人公のﾊﾟｲﾛｯﾄは素寒貧でヨレヨレな感じ。古い仲間のｹﾝﾄは凄腕のﾊﾟｲﾛｯﾄ。元インドの殿様の宝石を追って、ｴ-ｹﾞ会に浮かぶ島々と北ｱﾌﾘｶの砂漠を舞台に繰り広げられる大冒険。飛行機小説。ﾍﾟ-ﾊﾟ-ﾊﾞｯｸ。