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治療塔
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治療塔
¥220
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商品レビュー
3.5
9件のお客様レビュー
「著者初の本格的近未来SF」と銘打たれているが、発表当時の評価はあまり芳しくなかったような記憶がある。スペースシャトル「チャレンジャー」事故など、1980年代後半の出来事から作り上げられた世界観なので、古いと言えば古いのだが、東京電力福島第一原発事故を経た現在から見ると、作中に...
「著者初の本格的近未来SF」と銘打たれているが、発表当時の評価はあまり芳しくなかったような記憶がある。スペースシャトル「チャレンジャー」事故など、1980年代後半の出来事から作り上げられた世界観なので、古いと言えば古いのだが、東京電力福島第一原発事故を経た現在から見ると、作中に描かれた核戦争後の「残留者」たちの生活が奇妙なリアリティを持って迫って来るから不思議である。 ストーリーとしては決して起伏がある作品ではない。エクリチュールの緊張感という意味でも、直前に読んだ『万延元年のフットボール』に比べるべくもない。しかし、核に汚染された土地にうっそうと生える木々や雑草の力強い様子が、なぜだか印象に残った。「残留者」たちのしたたかなたくましさを重ねて読んでしまうからだろうか?
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治療塔とは、「もうひとつの地球」に発見された遺跡である 先史文明など存在しえなかったはずの星になぜ そのような人工物が建っていたのか 誰にもわからなかった しかも不思議なことに 治療塔の内部空間には人間を若返らせる力があった そのためキリスト教徒たちは、それを「生命の樹」とも呼ん...
治療塔とは、「もうひとつの地球」に発見された遺跡である 先史文明など存在しえなかったはずの星になぜ そのような人工物が建っていたのか 誰にもわからなかった しかも不思議なことに 治療塔の内部空間には人間を若返らせる力があった そのためキリスト教徒たちは、それを「生命の樹」とも呼んだ 宇宙移民の失敗で「古い地球」に帰還したエリート達は 非エリートを労働力に用い あらたな貴族社会の建設を目論んでいる 「大出発」の後、古い地球の混乱を生き抜いてきた残留者には そのように信じて 帰還者に反感を持つ者も少なくなかったが 一方では、帰還者と残留者との間に 禁断の愛が芽生えてしまうこともあった そこで帰還者たちは、残留者との婚姻を禁止し 厳しい取り締まりの対象とした 治療塔によって変質した「新しい人々」の血統を 保護するためである 治療塔の力を、人類の手で再現するまで そのようにして純粋な血を守っていかなければ 破壊と汚染の泥沼に落ち込んだ地球を救うことはできない 帰還者たちはそのように考えていた 治療塔とはいわば 生きた人間の「生まれ直し」を実現するための 人造メイトリアークである しかしそんな大層なものではなく ただの若返りエステサロンにすぎない、という見方もあろう バブル期に発表されたこの作品では いずれの暗示ともとれるあいまいな段階で終わっている
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- ネタバレ
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確か、筒井大人が「本の森の狩人」で紹介していたような。大江がSF好きの武満のために書いたんだそうです。 大枠は確かにSFで。 えーと、汚染されきった地球。 スターシップ公社は100万人の「選ばれた者」たちを選抜、「新しい地球」に移住。なぜか十年後に帰還。(この経緯がSF)「残留者」たちは結構生き残ってて。 残留者リツコの伯父・隆は公社総裁。 公社技師の隆の息子・朔とリツコがくっついて・・・ と、どんどんSFからただの大江節へ ^^;; 祖母が隆に、 「公儀の為と身内を切り捨てるお前なら、 よもや母がお前を撃たないとは思うまい」と 銃をつきつけるところが最高に格好良かった。 ・・・実際に撃つし ^^;; はい、刀自贔屓です、私。
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