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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | マガジンハウス |
発売年月日 | 2005/09/15 |
JAN | 9784838713912 |
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まず、最初に「書評のレッスン」というのが置いてある。何が書いてあるかといえば、書評は、藝と趣向と語り口だという、持論である。職業的作家として、新聞や雑誌に文章を載せているわけだから、いくらいいことを書いても読者に目を止めてもらわなければ何にもならない。そこのところが痛いほど分かっ...
まず、最初に「書評のレッスン」というのが置いてある。何が書いてあるかといえば、書評は、藝と趣向と語り口だという、持論である。職業的作家として、新聞や雑誌に文章を載せているわけだから、いくらいいことを書いても読者に目を止めてもらわなければ何にもならない。そこのところが痛いほど分かっている。だから、この人の書くものはおもしろいし、ためになる。 丸谷の書評の原点はイギリスの書評である。高級紙にかなり長文のしかも抜群に面白い書評が載る。そういう書評を喜んで読む読者が多数いる、ということだ。書評からその国の文化程度が分かる。丸谷としては日本にもそういう読者が育ってほしい。そこで、イギリスのいいとこはまねをして、長くて趣向に富んだ藝のある書評を機会を求めてはせっせと書き続けてきた。 その珠玉の諸編が二章に集められた74の書評である。主として毎日新聞の書評欄に収められたものだが、掲載された時点で多くのものを読んでいるはずなのに、あらためて読んでもいっこうに面白さは減らないのは、こちらの記憶力が減退しているせいばかりではない。 それは、一つにその趣向にあるだろう。概して丸谷の書評には、それまでにない見方をあえて立てるというところがある。博識で好奇心旺盛な氏は洋の東西を渉猟し、時間を遡り、思ってもみなかった共通点を探り当てては読者を煙に巻く。ミシェル・パストゥローの『ヨーロッパの色彩』を論じ、著者が国旗は単独で存在せず他の国旗との比較で意味を持つと書いていることから、すぐに話を日本に転じてみせる。曰く、明治以来日の丸が定着したのは、まず英米仏欄の四国にない円という意匠であったこと、次に四国の国旗にある青色を排し、赤一色とした点、さらには家紋に近い意匠の形状と単色性にあったと。意表をつかれ、そして深く肯かされる。うまいものだ。 さらには、書き出しと結びの呼応、俗にくだけて品の落ちない語り口の巧さがある。世に達意の名文というのがある。意味が通じないでは名文も何もあったものではないが、そういう文章が少なくないことも事実だ。だからこそ、達意であることが称揚される事情がある。しかし、それだけでは寂しい。文章も美術や音楽のように体験して愉しむというところがないといけない。丸谷の文章には、サロンに飾られた絵を見たり、室内楽を聴くような知的で洗練され、それでいてどこかエロティックな香りがある。 書評には、世間に知られていない見方、考え方を紹介し、広めるという役割もある。書評家の藝の一つは、誉めることである。それもうまく誉めなければならない。読者が自分でも分かるような美点や長所を挙げてみても藝とは呼べない。丸谷はその点でも、余人の追随を許さない。誉めあげることもあれば、けなしているようでいてよく読むと誉めているのだな、と分かるような褒め方もある。実に藝が細かい。 手慣れて見える文章だが、その裏に、何度も書き直すという至極当たり前に見えて、実はかなり難儀な作業をいとわない資質がある。おそらく自分の文章もまた批評的に読むことができるのだろう。日を置いて読み直し、書き足りなかった点、読み落としていた視点を入れて再度、書き直す。「書評のレッスン」の中に、マンゾーニの『いいなづけ』の書き直し、カズオ・イシグロの『日の名残り』の書き足しの二篇がある。この手練れにして、この精進ぶり、畏れ入る。 丸谷は自分の原稿をまずは5Bか6Bの鉛筆で下書きし、その後いろんな色のインクで清書するという。書名は、そこからきている。その方が気分を替えることができていいらしい。解説、パンフレット、さらには帯まで、本に関する断簡零墨すべて見せますという気合いの入った一本。
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