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市民の反抗 他五篇 岩波文庫
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 岩波書店/岩波書店 |
発売年月日 | 1997/11/19 |
JAN | 9784003230732 |
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市民の反抗 他五篇
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商品レビュー
3.9
8件のお客様レビュー
H・D・ソローは「森の生活」でとても感銘を受けていたので、本書も購入しました。本書はエッセイが6つ掲載されていて、ずいぶん毛色の違う内容となっていますが、期待を裏切らずとても満足しています。まず本書の読み方ですが、読みたいエッセイについて、まず巻末の解説を読むことをお勧めします。...
H・D・ソローは「森の生活」でとても感銘を受けていたので、本書も購入しました。本書はエッセイが6つ掲載されていて、ずいぶん毛色の違う内容となっていますが、期待を裏切らずとても満足しています。まず本書の読み方ですが、読みたいエッセイについて、まず巻末の解説を読むことをお勧めします。それによってどういう背景でソローがこの文章を書いたのか(講演したのか)、当時の環境からするとソローの主張がどれだけ革新的だったのかがわかります。それを把握したうえで(つまり19世紀米国マサチューセッッツ州の住民になった気持ちで)読んでみてください。 タイトルにもなっている「市民の反抗」そして次の「ジョン・ブラウン大尉を弁護して」ですが、「森の生活」とはうってかわって、ソローの正義感の強さ、奴隷制への嫌悪感がよく伝わってきます。解説によれば「市民の反抗」はガンジーやマーティン・ルーサー・キングなども愛読していたとのことですから、社会改革派にとってのバイブル的存在だったことになります。 ただ私はそのあとに登場するエッセイ、「歩く」「森林樹の遷移」のほうがより興味深く感じました。おそらく「森の生活」との近接性を感じたからかもしれません。「歩く」の中でソローは、単に外を歩けばいいということではなく、人間の手つかずの自然、原生林、野原を歩け、それこそが命の活力だと主張します。「野性的なるものは善に近し!」とソローは述べていますが、これなどは鈴木大拙氏が重視する「自然」(英語のネイチャーのような意味ではなく、人間を含めた生き物が自らの本来の姿を現すこと)に近いでしょう。大拙氏は日本語が本来意味する「自然」に該当する言葉が英語にはないと述べていますが、ソローは感覚としてその概念を持っていたのではないでしょうか。「森の生活」を読んでいるときもたびたび感じましたが、ソローの思想からは東洋的なエッセンスを多く感じます。主張のわかりやすさでいえば「市民の反抗」ですが、主張の深さという点で私は「歩く」がとても気に入りました。
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代表的とされる六編のエッセイを収録。本文は約320ページ。巻末の訳者解説は各作品の解題を兼ねる。多くは講演や日記をもとにしている。 ---------- 「市民の反抗」 ガンジーやキング牧師、反ナチ抵抗運動にも影響を与えたというエッセイ。人頭税の支払いを拒否して収監されたエピソ...
代表的とされる六編のエッセイを収録。本文は約320ページ。巻末の訳者解説は各作品の解題を兼ねる。多くは講演や日記をもとにしている。 ---------- 「市民の反抗」 ガンジーやキング牧師、反ナチ抵抗運動にも影響を与えたというエッセイ。人頭税の支払いを拒否して収監されたエピソードをはじめ、政府批判に終始する。人々の良心に訴え、個人を尊重する国家を夢想する。 「歩く」 このエッセイを中心に編集された、ポプラ社の『歩く』で既読だったため、今回の読書ではパスした。基本的には『ウォールデン 森の生活』の簡略版のようなイメージをもっている。 「ジョン・ブラウン大尉を弁護して」 奴隷制度廃止運動家として活動し、反逆罪で絞首刑に処されたブラウン氏を擁護した講演からなる。奴隷制や政府の批判は前篇と共通する。 「森林樹の遷移」 基本的に純粋な自然科学的なエッセイ。ソローらしい社会批判はなりを潜め、森で暮らしたソローの観察眼が活かされた植物観察の記録。 「原則のない生活」 おもに労働に対するソローの考え方を表明する。雇われ仕事に対する強い抵抗感、忌避の念を打ち出している。人間はその本性に従って生きねばならないというソローの基本姿勢がわかりやすく見出される。 「トマス・カーライルとその作品」 同時代のイギリスの歴史家・評論家であるトーマス・カーライル作品に対する批評文となっている。二十代後半の文学修行中におこした文章とのこと。 ---------- ソロー関連では『森の生活』『歩く』につづく三冊目の読書になる。ガンジーにも大きな影響を与えたという「市民の反抗」への興味から本書にあたった。「市民の反抗」そのものは、人頭税支払いや奴隷制への反対などが『ウォールデン 森の生活』でも語られていたこともあってか、既知のソローをなぞるものだった。「ジョン・ブラウン大尉を弁護して」「原則のない生活」も、「人間の本性を大事にして、必要があれば政府に背を向けるべきだ」といった基本姿勢は変わらない。 本書に収められたうち、「森林樹の遷移」「トマス・カーライルとその作品」は上記のような社会批判から逸れて、ソローの違った側面に光を当てた選択といえる。それだけにこの二編が本書で初邦訳というのも理解できる。話が一般論を離れて専門的になり事前知識も必要になるため、本書のなかではとくに興味をもつことが難しい二編だった。 上記の二編を除いては、自然礼賛と、文明・政府批判、厭世的な社会観が基調となっており、ソローの特色といえるのだろう。所感としては、『ウォールデン 森の生活』で受けたソローの印象を大きく変えるような内容ではなく、かなり表面的な読書に終わったというのが正直なところだ。本書に収められた六編のなかで比較的面白く読めたのは、「原則のない生活」だった。解題を兼ねる訳者解説は各編の背景を説明してくれており、本文の前に読むのも悪くなさそうだ。
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「統治することの最も少ない政府こそ最良の政府」、政府とは高々一つの方便にすぎない。常備政府が振り回す常備軍とは腕にすぎない。人民がそれを通じて行動を起こすことができないでいるうちに、政府そのものが常備軍と同じように乱用され始める。 メキシコ戦争は常備政府を自らの道具として利用し...
「統治することの最も少ない政府こそ最良の政府」、政府とは高々一つの方便にすぎない。常備政府が振り回す常備軍とは腕にすぎない。人民がそれを通じて行動を起こすことができないでいるうちに、政府そのものが常備軍と同じように乱用され始める。 メキシコ戦争は常備政府を自らの道具として利用している比較的少数の個人のなせる技。政府というものを見ていると、人間は自らの利益のためなら、まんまと騙されるばかりでなく、自分自身を騙すことができる。 政府とは人々が互いに干渉し合わないでうまく暮らしていくための一つの方便にすぎない。 政府を打倒するのではなく、「もっとマシな政府」を作ろう。「多数派」が支配する社会は正義を基礎においているとも思えない。一人一人に備わった良心によって決定できるような政府はないか・・法律が人間をわずかでも正義に導いた試しなど一度だってなかった。むしろ法律を尊敬する人が不正に手を貸した。 大多数の人間が人間ではなく機械として国家に仕える。防衛のためには反乱と革命を起こすべき。私は遠方の敵に対してではなく、我が故郷の近くにいながら遠くの敵と協力し、その命令に従っている人に対して異議を申し立てているのである。彼らがいなければ遠方の敵など害にならない。
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