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私のなかの「ユダヤ人」
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 現代企画室/ |
発売年月日 | 2007/08/15 |
JAN | 9784773807080 |
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私のなかの「ユダヤ人」
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「親に内緒で初めてムール貝やカキやエスカルゴを食べた時、そのおいしさに私は神をうらんだものだ。宗教というものは、功徳を施さず、いつも人間を苦しむようにしむけるのだ、という考えを、私は一層強く抱いたものだった。」(p.75)
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写真家の広河隆一氏と結婚して2人の子どもをもうけ、日本に11年間くらしていた著者が、突然、日本とフランスの両方から国籍を否定され「無国籍者」になってしまう、というショッキングな事態から、本書は始まる。ルティさんは日本国籍を申請するため、法務省の指導によってフランス国籍を離脱したが...
写真家の広河隆一氏と結婚して2人の子どもをもうけ、日本に11年間くらしていた著者が、突然、日本とフランスの両方から国籍を否定され「無国籍者」になってしまう、というショッキングな事態から、本書は始まる。ルティさんは日本国籍を申請するため、法務省の指導によってフランス国籍を離脱したが、その直後に「日本社会への同化の程度に疑問がもたれる」という理由で、日本国籍の申請を却下されてしまったのだ。それだけでもひどい話だが、さらに両方の政府担当者から、あなたはユダヤ人なのだから、イスラエルの国籍を取得することだってできるでしょう、とほのめかされたという。同化を強いながら同化を拒む国家の壁の前で、自分を「ユダヤ人」の側に押し戻そうとする力を感じとった著者は、「ユダヤ人」であるとは自分にとって何を意味するのかを探求する旅を始める。ルティさんは本書で、個人的な自分史や家族の事情を読者にあかしてくれているのだが、それはまさに「ユダヤ人」や世界の歴史と切っても切り離せない。著者の両親はポーランド生まれのユダヤ人だったが、ナチスに追われてロシアに逃れ、戦後、フランスに移住する。親戚のほとんどは記録も残さないままに消滅した。ルティさんらはそのままであればフランス生まれとなるはずだったが、迫害の経験を通してシオニストになっていた両親は、わざわざイスラエルでの出産を選び、ルティさんら3つ子は、建国から間もないイスラエルの希望の象徴として脚光をあびることになったのだった。そうした偶然よりも驚かされ、感銘を受けるのは、あたえられたアイデンティティをそのまま受け入れることを拒否し、自らの力で世界への目を開き、自由を獲得したいと願ったルティさん自身の格闘だ。1968年のパリ革命に触れ、イスラエルのモブツで若き広河隆一と出会ったことから、パレスチナに対するイスラエルの仕打ちに目を開き、愛する家族と離れることになっても、自我を成長させる道を選んできた。自身の拠ってきた足元が崩れることを受け入れることのできるその勇気に、本当に尊敬を感じる。では「ユダヤ人」とは何なのか。もともと宗教的なアイデンティティであったものが、ナチスにより人種化され、後にイスラエル自身がその定義を制度化してきたことは重大な歴史的皮肉というしかない。だが個々の人々、特にユダヤ教を信奉してもおらず、「イスラエル人」でもない人々にとって、ユダヤ人であることは何を意味しているのだろうか。ルティさんは、「ユダヤ人」というレッテルを貼られて殺されていった人々ともつながっている自身の背景という意味で、自身とユダヤ人の関係を認める、と述べている。と同時に、民族や宗教や国籍といったものによって排除され、抑圧されている人々―そこにはパレスチナ人もふくまれる―との、自由を求める連帯の中に、そうした抑圧的なアイデンティティからの解放、あるいは異なるアイデンティティの政治の可能性を見ているようだ。冒頭近くで、ルティさんはこう述べていた。「同化するにつれ、私には日本の中のさまざまな『ユダヤ人問題』が見えてきた。それらは被差別部落問題、在日朝鮮人問題、アイヌ問題であり、一人の女としてはこの国の高度に完成された父権社会、母親としては、この国の息詰まるような教育の問題である。」このような意味での「ユダヤ人問題」をともに考えるために、これほど個人的な記録と考察を共有してくださったルティさんに感謝したい。
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