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サーフィングラフィティー
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サーフィングラフィティー

柴田哲孝【著】

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サーフィングラフィティー

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 角川学芸出版/角川グループパブリッシング
発売年月日 2007/07/31
JAN 9784046211095

サーフィングラフィティー

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2024/06/11

 わたしはサーフィンをやったことがない。だから活字上の波の上で、ボード一枚を隔てて感じるうねりと、岸辺の景色とを想像した。  ロングボードに拘る主人公の、純朴な波乗りへの情熱に魅入られた。能力主義や損得感情の色濃いビジネスとの対比が繰り返し語られた。  サーフィンの背景にある...

 わたしはサーフィンをやったことがない。だから活字上の波の上で、ボード一枚を隔てて感じるうねりと、岸辺の景色とを想像した。  ロングボードに拘る主人公の、純朴な波乗りへの情熱に魅入られた。能力主義や損得感情の色濃いビジネスとの対比が繰り返し語られた。  サーフィンの背景にある、勝ち負けへの無頓着さとか、自然への憧れとか、都会と都会を象徴する時間や空間、価値観への失望、もしくは慰めも書き手の文章からは垣間見えた。  主人公はそんな都会とサーフィンで繋がる波乗りとの間で浮かんでいるような人生を歩む。彼の生き方が、岸辺に打ち寄せた波が、沖へ引き戻される様子に被った。  破産や裏切り、火事などの事故。いずれも、自ら命を絶ってもおかしくないような苦境に立たされるたびに「いいときもあればわるいときもある」という、サーフィンの感性に救われてきた彼に少しだけ嫉妬した。  わたしたちは、この狭い、自然から隔離された人工的な環境のなかで、ゲームのプレイヤーとして、あるルールを絶対の価値観にして生きていく。    プレイヤーのつもりが、傍から見れば、CPUやモブのように立ち振る舞まっている。  主人公が田舎に隠居して、新聞配達と農作業で半自給自足しながら、金銭の世界と自然との間で充実して生きている晩年がいちばん印象に残った。  同じ50代以降の人たちのは、市場からリタイアしたあと、生気を失ったように、TVや酒などの娯楽を十分に楽しむことも出来ずに、燻っている。それか、まだそのゲームに縋りつこうと傷んだ体を引きずって歩く。  本書の節々には夢を持つことの重要性が記されていたけど、主人公本人は、成果主義的な夢とか目標とかを追いかけたのではなくて、少年のように純粋に好奇心のままに生きたような印象があった。  サーフボードを一から作ったのだって、売れると思ったからじゃなくて、波乗りに憧れたから。大会を立ち上げたのも、サーフボードを作り続けたのも、サーフィンを普及させたかったからだし、仲間に楽しく波乗りさせたかったからだ。  資本価値に換算されてしまった、自己啓発書の象徴する「夢」とは異なる価値観を生きた人。  それがサーフィンである必要はないと思う。海でなくてもいい。何かの波がきたときには、ワイプアウトを恐れずに乗ってみるといい。背中を押される一冊。  『老人と海』『怒りの葡萄』を彼が愛読しているシーンには突っ込まずにはいられなかった。  

Posted by ブクログ

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