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大黒屋光太夫(上) 新潮文庫
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大黒屋光太夫(上) 新潮文庫

吉村昭(著者)

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大黒屋光太夫(上) 新潮文庫

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 新潮社/新潮社
発売年月日 2005/05/28
JAN 9784101117478

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商品レビュー

3.7

15件のお客様レビュー

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2010/05/28

江戸時代、ロシアに漂…

江戸時代、ロシアに漂着した漁師、大黒屋光太夫と乗組員たち。帰国を夢見てペテルブルグまで赴き、皇帝に直訴、帰国するまでの不屈の闘いを描いた歴史小説の名作。仲間を励ましながら自らも悩む光太夫。帰国を諦めキリスト教の洗礼を受ける者、妻をもらう者、命を落とす者、それぞれの者の悲しみや苦し...

江戸時代、ロシアに漂着した漁師、大黒屋光太夫と乗組員たち。帰国を夢見てペテルブルグまで赴き、皇帝に直訴、帰国するまでの不屈の闘いを描いた歴史小説の名作。仲間を励ましながら自らも悩む光太夫。帰国を諦めキリスト教の洗礼を受ける者、妻をもらう者、命を落とす者、それぞれの者の悲しみや苦しみが心に刺さる。諦めない光太夫にはかなり燃えます。

文庫OFF

2024/09/10

 江戸時代にロシアへと漂着した日本人が、初めて帰国できたという魅力的な史実を題材にした、井上靖さんの『おろしや国酔夢譚』との違いを知りたくて、こちらはフォローしている方に教えていただきました。改めまして、ありがとうございます。  まず読み始めて気付いたのが、井上さんの作品では...

 江戸時代にロシアへと漂着した日本人が、初めて帰国できたという魅力的な史実を題材にした、井上靖さんの『おろしや国酔夢譚』との違いを知りたくて、こちらはフォローしている方に教えていただきました。改めまして、ありがとうございます。  まず読み始めて気付いたのが、井上さんの作品では「大黒屋光太夫」ら総勢17名を乗せた神昌丸が出帆したという表記のみで、出帆前の彼らについては全く触れていなかったところを、吉村昭さんの本書ではじっくりと描写している点で、白子浦の繁栄は家康のお陰といった歴史的繋がりも興味深い中、沖先頭の光太夫の半生について、幼い頃から知識欲が旺盛であり、神昌丸に自身の手荷物として浄瑠璃本が多く入っていたのは、物語本を好んで読んでいた、その頃からの趣味であったことや、二度も養子になりながら、やがて船親父の「三五郎」から様々な事を学び、彼を親のような存在として敬意を抱いていたという関係性も初めて知り、そんな二人の信頼関係は、後の航海中に於ける生死を賭けた嵐の場面からも感じ取ることができた。  また物語の構成として、井上さんは全体的に一歩引いた客観的視点で、日本人とロシア人、現地の人々との交流も含めてバランスよく描いている中、吉村さんはページを割きたい場面とそうでない場面とを使い分けることで、起伏のある展開を見せながら、あくまで主役は光太夫たちということで、彼らの思想や行動に焦点を絞って描いているように思われた。  その中で一つ印象的だったのが、ニビジモフらロシア人と島民たちの諍いに光太夫たちが巻き込まれたエピソードであり、そこで改めて痛感させられたのは、当時に於ける支配される側のどうすることもできないやり切れない悲しみであり、それは光太夫も重々承知してはいたのだが、これまで彼らが生きてこられたのはニビジモフのおかげでもあるため目を瞑る形になってしまった、そんな断じて許せない部分と恩人の部分を共に兼ね備えたニビジモフ像というのも、良いか悪いかはともかく忘れられないものがあった。  そして、井上さんの作品との最大の違いと思われたのが、光太夫のキャラクターであり、井上さんの描く彼はリーダーシップに優れ、他の船乗りたちの前では決して弱音を吐かない皆の憧れといった存在なのに対して、吉村さんの描く彼は皆の前でも悲しいときは思い切り嗚咽したり、何度も不安な気持ちに駆られたりと、超然としたものは無いもののその分感じられる人間臭さが魅力で、それは三五郎が彼に、『豊かな生活になじんだ光太夫が想像を絶した苦難に遠からず身も心もくじけてしまうだろう』と言う場面など、井上さんの作品ではまず有り得ないのではと感じられた程の違いであった。  ただ、本書の光太夫が決してリーダーとしての魅力が無いというわけではなく、例えば嵐の場面で荷を捨てるのは、沖先頭の責務を放棄する行為でありながら、それは水主たちの命を守ることを第一義と考えたことによるものであることや、カムチャツカへ向かう時アミシャツカ島で無念の死を遂げた仲間たちへ、『私たちにしがみつけ、共に島を離れよう』と涙ながらに叫んだのも、出来ることなら誰も訪れないような場所に置いて行きたくない、そんな気持ちが溢れ出しており、その責任感のある仲間思いの姿にはとても好感を持てるものがあった。  それから、もう一つ挙げておきたいのが、井上さんは序章で光太夫以前の漂流者を紹介していたのを、吉村さんは物語の大きな流れの中で記載することによって、これまで誰一人日本に帰れた者がいないことを光太夫が知ることで、もしかしたら自分たちも帰れないのではと、とてつもない不安感を抱いたことが、「なぜロシアは漂着した日本人を帰国させないのか」という疑問点に繋がって、やがてはロシアの南進政策の一環なのではないかと推測する点には、井上さんの作品でも全く信じ切っていた訳ではないけれども、より現実的でシリアスなものを吉村さんは物語に取り込んでいる印象を受け、そうした危機感を持った状況で光太夫はどう行動するのか、下巻も注目したい。  他にも、ラクスマン(ラックスマン)の個性や、イルクーツクに向かう際に光太夫たちが乗っていたキビツカ(輿)の中が、防寒衣をつけたまま布団の中にいても体が震える程の寒さでありながら、更に天井からは氷片が落ちてくる恐怖があったこと等、それぞれの作品の違いを探しながら読むのも楽しい。  ただ、これは好き嫌いの問題ではあるのだけれど、今のところ、あまりに光太夫たちのことしか描いていないことが、ロシアの情景や感傷的なことも色々と知ることのできた、井上さんの作品を先に読んだ私からしたら、やや物足りなさを感じてしまったのも確かであった。

Posted by ブクログ

2022/10/08

急死に一生の目など遭ったことのない身としては、漂流の絶望感は想像を絶する。生き延びることのみが目的となる日々。陸の姿に恋焦がれる。いざ、たどり着いた島。そこはロシア領。命あることだけに感謝する。たとえ定住となってでも・・・とは、ならない。今度は、再び故郷の土地を踏むことを希う。東...

急死に一生の目など遭ったことのない身としては、漂流の絶望感は想像を絶する。生き延びることのみが目的となる日々。陸の姿に恋焦がれる。いざ、たどり着いた島。そこはロシア領。命あることだけに感謝する。たとえ定住となってでも・・・とは、ならない。今度は、再び故郷の土地を踏むことを希う。東端の島から「シベリアのパリ」への流転。国の思惑があるとしても、出会う人々の親切さと情の深さには感心する。ロシアは近くて遠い国。過酷な旅に次々と命を落とす乗組者たち。生き残っている人の名前を確認し、下巻へと進める。

Posted by ブクログ

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