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響きの考古学 音律の世界史からの冒険 平凡社ライブラリー603
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 平凡社/平凡社 |
発売年月日 | 2007/02/09 |
JAN | 9784582766035 |
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響きの考古学
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商品レビュー
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5件のお客様レビュー
音律についてこれほど丁寧にまとめたものは他にないのではないだろうか。モノコードにも関心を持った。 ピタゴラスは、音の実験をモノコード(一弦琴)を使って行った。弦は12分割され、12,9,8,6を組み合わせて様々な比率が生みだされた。純正五度(3/2)を繰り返すことによって、12...
音律についてこれほど丁寧にまとめたものは他にないのではないだろうか。モノコードにも関心を持った。 ピタゴラスは、音の実験をモノコード(一弦琴)を使って行った。弦は12分割され、12,9,8,6を組み合わせて様々な比率が生みだされた。純正五度(3/2)を繰り返すことによって、12の音が得られる。ただし、12番目の音は24セント高く、ピタゴラス・コンマと呼ばれた。Cを開始音にして音階順に並べると、C-D-E-G-A(ペンタトニック)、C-D-E-F#-G-A-B(ディアトニック・スケール)が得られ、F#をCの純正4度のFに置き換えて、ピタゴラス音律の音階が生まれた。全音は9/8(204セント)でトノス、半音は256/243(90セント)でリンマと呼ばれる。3度は81/64で、協和性が弱いことが問題となった。 中世において、キリスト教が西欧社会に浸透していくうえで、音楽が担った役割は大きい。音楽を通して神の存在がイメージとして浮かび上がり、信仰心が強められた。教会の指導者たちは、音楽の持つ力を最大限に活用した。グレゴリオ聖歌のほか、フランスのトルバドゥールやトルヴェール、ドイツのミンネジンガーも、ピタゴラス音律で歌っていた。 ピタゴラス音律の3度は不協和音として扱われていたが、イギリス・アイルラドで使われていた5/4の純正3度が14〜15世紀に大陸に伝えられ、浸透していった。15世紀にスペインのバルイトロメー・ラモスが純正3度を含む音律を考案し、プトレマイオスのインテンス・ディアトニックと一致した。 ピタゴラスの3度と純正3度の22セントの差(シントニック・コンマ)を解消するために、5度を5.5セントずつ縮め、G#-E♭間を36.5セント(5.5*11-24)広げることによって、ミーントーンが誕生した。ミーントーンは、17世紀以降、チェンバロなどの調律法として用いられ、バロック時代の多くの作曲家に愛用された。 ミーントーンのような手続きをさらに巧妙に行うウェル・テンペラメントが、ヴェルクマイスターやキルンベルガー、ヤングなどによって考案された。CからF#までの変化記号のない5度の連鎖では純正に近い3度が、F#から一巡後のCまでの変化記号多い領域では純正5度が得られている。バッハの平均律クラヴィーア曲集は、英語ではWell-Temperedであり、日本語訳が誤訳だった。 1オクターブを12等分する平均律は、17世紀から理論的には算出されていたが、調律法が難しく実用化されなかった。1850年代にピアノの大量生産が始まったことに伴って、平均律が導入された。 ハリー・パーチは、11までの素数の組み合わせの比率から29の音高を導き、音程が幅広くなっている個所に新たな音高を挿入して43音音階を生みだした。 ラ・モンテ・ヤングは、2,3,7の3つの素数を用いて、7/4の7度、7/6の短3度、8/7の長2度を生みだした。ブルース・ノートの7度は7/4の969セントと言われ、7を用いた純正音程は様々な民族の音楽にみられる。 ジム・ホートンは、フラクタル理論を使いながら、純正音程が自動的に算出されるプログラムを用いた作曲を行っており、あらゆる音律による音階の生成や編集をすることができるソフトScalaを開発している。 ヤマハのシンセサイザーTX81Zは、いくつかの音律がプリセットされているほか、オクターブを768(2^8*3)に分割したステップで音高を変えることができる。
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私は作曲なんぞしているが、耳は良くない。合唱とか擦弦楽器をやっている方は微細な音程の差異を認識できるようで、うらやましいのだが、たぶん私はピアノしかやっていなかったために、そういう耳が育たなかったのだろう。ほんとに音楽を極めたいなら、ソルフェージュは欠かせない。 この本で作曲家藤...
私は作曲なんぞしているが、耳は良くない。合唱とか擦弦楽器をやっている方は微細な音程の差異を認識できるようで、うらやましいのだが、たぶん私はピアノしかやっていなかったために、そういう耳が育たなかったのだろう。ほんとに音楽を極めたいなら、ソルフェージュは欠かせない。 この本で作曲家藤枝守氏は、ピタゴラス音律、純正律あるいはインド、アラブの音律などを挙げ、むしろ「平均律」だけに縛られている現在の音楽状況の貧しさを指摘している。 バッハの「平均律クラヴィーア曲集」もほんとうは「平均律」ではなくて「ウェル・テンペラメント」という調律法である。これだと、調性ごとに微妙に色彩感(ハーモニーのかすかな濁り/陰り)が出るはずなのだが、平均律のピアノで弾くと、すべての調が相対的におんなじになってしまう。 19世紀半ばくらいから平均律によるピアノが爆発的に量産されたことと、もともと秘めていた西洋的合理志向が相まって、西洋近代音楽はなにもかもが平均律の枠内に収まってしまった。無調や1/2微分音なんかも、しょせんは平均律の内部でじたばたしているというだけだ。 そういえば、ロックの歌唱を譜面化したものをピアノで弾くと、なんか元の歌と違うような、素っ気ない感じがするのだが、「声」が実際には微妙な音高で歌われているのに、無理に平均律化してしまうと細かいニュアンスを欠いてしまうのである。 同様に、インドのラーガや笙の和音をピアノでなぞってみても、どうもニュアンスが変わってしまう。鍵盤しかやっていないと、根本的に、我々は「楽器」に縛られいるのである。 藤枝さんはハリー・パーチなどを高く評価しているようだが、藤枝さん自身の作品は、私はフォンテックの「今日は死ぬのにもってこいの日」1枚しか知らない(「響きの交唱」と「植物文様ソングブック」が収められている)。これは西洋中世からルネサンスにかけての音楽によく似ており、要するに純正律の美しさを持っている。 ピアノにしかなじまなかった私はどうしても「平均律」に足かせをはめられているが、シンセサイザー音源では別の調律も試せるはずなので、今度いろいろ試してみようかなと思った。
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巻末にて中沢新一が評する通り、音楽史を通じて論じられた文化人類学書という見え方が後に残る良本。 文章、内容共に読ませる本ではないが、著者の真摯なまなざしから見受ける主題が気持ち良く響く。論文とはこう在るべきだと思う。
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