空からおちてきた男

ジェラルディンマコックラン【作】, 金原瑞人【訳】, 佐竹美保【絵】

• 販売会社／発売会社: 偕成社/偕成社
• 発売年月日: 2007/04/05
• JAN: 9784035404606

商品レビュー

2021/08/21

飛行機事故で墜落した男フラッシュは、少女と少年スティラとオルに助けられて村へ行く。カメラを知らない村人は、初めは驚くものの、あれ撮って、これ撮ってとお願いしてくる。残り10枚のフィルムで村の人、生活を写すものの、助けられた救助隊員には、そんな村は近所にない…と。
全て夢だったのか？夢があってとても面白い。

2016/12/19

飛行機の故障で沙漠に墜落したカメラマンのフラッシュは、文明から隔離された村に辿り着く。その手にあるのはインスタントカメラのみ。残っているフィルムは１０枚分だけ。
今までの価値観とは全く異なる世界に放り込まれた時、人は何を拠り所とするのか。フラッシュの手にはインスタントカメラがありました。はじめ怖々だった村人も次第にフラッシュが何を撮影するのか気になり、また撮影してもらいたくもあり彼の元に集まります。カメラマンとして今まで数限りなく撮影して来たフラッシュだからこそ、限られたフィルムで何を撮影するか。それは何に価値を見出すか。今までとまるで違う価値観を見出す自分に気付く。佐竹美保のイラストで表される写真もかっこよく素敵なのです。
最後に現実と非現実が曖昧になるような描写もありますが、基本は真っ直ぐな物語です。フラッシュの素直な感覚がそのまま読後感につながります。

2013/07/22

新しく訪れる生命に、これから老いて行く若者に、死にゆく者に、消えて行く記憶に、「笑って」と呼びかける。そして写される写真。その中の姉弟は、永遠に子どものまま。風景は、ゆらゆらするのをやめて空中からはがれ落ちた蜃気楼。融けることのない雪──。

飛行機の墜落事故で樹海に不時着したフラッシュ。
気がつけば、目の前にはスティラとオルと言う名の小さな姉弟がいた。彼女たちの案内で、フラッシュは手に安物のポラロイドカメラだけを持って村を訪れる……。
誰もカメラを、写真の存在さえも知らないさびれた辺境の村で、フラッシュは時の流れを止める、記憶を紙にのり付けするコトのできる偉大な魔法使いとして過ごすことになった。
残されたフィルムは九枚。残された九つの『魔法』。
フラッシュは求められるまま村にただ一頭だけの大切な雌牛を、村の勇者たちと一番の美女を、祭りの夜、かがり火ごしに村中の人びとが踊り歌う姿を、幾世代にも渡って描かれ続けた、消え行く古い壁画を、……明日、病で死ぬ少女の最後の笑顔を『魔法』で永遠に描き留める。
そして最後の一枚。村の長老は、「空からおちた男の絵、あなたの絵が欲しい」と言った──。

ごく短いお話です。主人公フラッシュの背景も村で過ごす日々も、決して深く描写される事はなく、その文章はドライです。それなのに、彼が撮った写真の一枚一枚に映り込んだ人々の表情や風景の奥深さを心にずんずん感じる事ができる、不思議な物語。