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古典日本語の世界 漢字がつくる日本
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 東京大学出版会/東京大学出版会 |
発売年月日 | 2007/04/23 |
JAN | 9784130830454 |
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古典日本語の世界
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日本語の書き言葉の文体はどのように形成されたのか。考えてみれば当たり前なのだけど、書くという行為自体がなかったところでは、文体というのは文字と同時に入ってくるものなのだ。だから、文字が入ってきて間もなくには我々が自分たちの言葉をそのままに書いていて言文一致が実現されていたとか仮定...
日本語の書き言葉の文体はどのように形成されたのか。考えてみれば当たり前なのだけど、書くという行為自体がなかったところでは、文体というのは文字と同時に入ってくるものなのだ。だから、文字が入ってきて間もなくには我々が自分たちの言葉をそのままに書いていて言文一致が実現されていたとか仮定したり、言と文が一つのところから次第に乖離していったとか想定する、プリミティブな発想で文章史を考えるわけにはいかない。 いわゆる名文という発想や、記紀万葉の素朴な文体から『源氏物語』の雅文へといった発展史観は、実際に古典作品の文章を読んでみるとなかなか当てはまらないもので、まじめに考えれば、古代中国語を日本語へと読み替える人工的なところから派生した訓読体がなぜ「美しい」のかとか、「春はあけぼの」を名文とするなら『枕草子』日記的章段の冗長な散文はなんなのかとか、すぐに足下をすくわれることになる。で、それにどうも落ち着きを感じない(が、古典の散文はすべからく名文であるべきという発想から抜けられない)人は、それを「素朴さ」と言ってごまかしてみたりする。 丸谷才一は『文章読本』のなかで、『伊勢物語』の「……ば、……ば、……ば、」とだらしなく続くあの文体はなんなのか、と率直な困惑を表明していた。『伊勢物語』が早くから古典として敬われていたことと、このだらしない文体とがなかなか結びつかないのが現代人の自然な感覚だと思う。『蜻蛉日記』に『和泉式部日記』、『枕草子』の日記的章段、『源氏物語』の序盤もそうである。で、今までは、これはまだ作者が「書き慣れていない」からという説明くらいしかされていなかったように思う。 ところが、本書を読むと、これはどうも漢字でもって日本語を表記する上での約束事が日本語の書き言葉の文体を生み出した、その漢文訓読文体の影響であったのではないかということが伺える。それ以前には日本語には(文字がなかったんだから)「文体」はなかった。文章を「書く」と言うことは「そのように書く」ということにほかならなかったわけで、そうなるとたんに古代の日本人がまず素朴な文章から書き始めたとかそういう話ではぜんぜんなくて、『伊勢物語』の文体は、作者が漢文作品に親しかった証左ということになる。
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