ドームの不思議 コンクリート造・組積造編

槇谷榮次【著】

• 販売会社／発売会社: 鹿島出版会/鹿島出版会
• 発売年月日: 2007/02/20
• JAN: 9784306093843

商品レビュー

2012/01/12

　本書は、古代の組石造ドームについての本である。内容は、若干技術者よりで構造、材料についてのことが多い。古代ドームの構造について扱った本はめずらしいので購入した。第一章では古代ドームを知るための予備知識を述べ、第二章では、古代ドームをより詳細に説明してあり、第三章では、三大ドームを取り上げ、ドームに対して骨組みシステムとシェル理論を用いて解析し、ドームの安全性を検証している。
　面白かった内容は、第３章で、ローマ・パンテオンのドーム、フィレンチェのサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂、パリのサント・ジェヌヴィエーヴの３つの代表的なドームの構造解析と簡単な構造検討・考察であった。筆者の検討によると、ローマ・パンテオン、フィレンチェ大聖堂は、柱によるアーチ状と考えたスケルトン構造システムと、ドーム全体のシェル構造システムが考えられ、それぞれのモーメント図から若干の引っ張り力は発生しているが、材料強度に収まっている。ローマのパンテオンは、足元の壁厚は6ｍもあるが、ある程度の余裕度があるが、これぐらいにしないと構造的に壊れてしまうことがわかった。パリのサント・ジェヌヴィエーヴは、薄肉構造の三重殻ドームで、初めて静力学と材料力学が適用された例とのこと。