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別離のとき

ロジェグルニエ【著】, 山田稔【訳】

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 みすず書房/みすず書房
発売年月日 2007/02/05
JAN 9784622072799

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2026/08/27

『シンメトリーというものは快いもので、そのため以後ずっとこの話を反芻するたびに、私は胸のうちでこうつぶやいたものだ。〈そうだな、おれはあの夫婦を二人とも救ってやったんだ〉と。「救う」は言いすぎだが。それから数ヵ月たって、女と子供は引越して行った。その後に入った住人は、年のため足も...

『シンメトリーというものは快いもので、そのため以後ずっとこの話を反芻するたびに、私は胸のうちでこうつぶやいたものだ。〈そうだな、おれはあの夫婦を二人とも救ってやったんだ〉と。「救う」は言いすぎだが。それから数ヵ月たって、女と子供は引越して行った。その後に入った住人は、年のため足もとが少々危くなっている二人連れの老女だった。この両人もいずれは困るようになって、私が救うとまではいかぬとも、援助するとか手を貸すことになるだろう。だがその場合、シンメトリーはどこにある?』―『シンメトリー』 ロジェ・グルニエの短篇集を読む。グルニエの皮肉な物言いは「ユリシーズの涙」で馴染んでいたので抵抗なく読むことが出来る。四頁ほどの短い話から、三十頁超の短篇まで、どの一篇にもグルニエ特有の皮肉な調子がある。それは世の中をやや斜めに見るような皮肉な(その意味では英語のシニカル[cynical]な)調子でもあり、市井の人々への愛情に溢れた皮肉という(その意味では英語のアイロニカル[ironical]な)調子でもある。総じて、その愛憎入り混じる皮肉な態度は老人の特徴でもあると思うけれど、それもその筈、訳者山田稔の解説によれば十篇中の九篇が作家が八十代になって書いた小品とのこと。 第二次世界大戦中にレジスタンス活動に従事し、戦後カミュの主宰する新聞の記者となり、その後ガリマール書店で原稿審査の仕事をしていたというグルニエは、どうやら予定調和的な世界観に異を唱える人のよう。理屈っぽいと言われがちなフランス人にありがちな心情なのかとも邪推してしまうけれど、短篇集の最后に置かれた「秘密」と題された短篇の主人公に、グルニエはこんなことも言わせている。 『それぞれの問題について、彼ははっきりした独自の見解をもっていた。しかしわざわざそれを擁護ましてや展開したりはしなかった。胸のうちではこう考えていたのだ。どうせ、相手は意見を変えはしまい。それなら、議論して何になる?』―『秘密』 そんな一文に出会うとグルニエの皮肉はむしろ厭世的な世捨て人の態度であるようにも思われるし、訳者あとがきの中で紹介されているように、グルニエ自身は自らをペシミストであると表明していたようなので、尚更にそう感じるところではある。もっとも単なる悲観者ではなく、「陽気なペシミスト」というところがグルニエの皮肉屋の真骨頂と言ったところだろうか。そういう印象は何も個人的な趣向という訳でもないらしいことは、本書の刊行後に行われたインタビューで、インタビュアーが次のように投げ掛けるのを聞けば解る。 『この本の中であなたは、読者に主人公にたいする共感をいだかせておいて、突然、その人物を壁に叩きつけています』―『訳者あとがき』 まさに悲喜交々な読書の印象の根源を捉えた言葉だと思うけれど、グルニエの経験を知ると、彼の人生観は案外と中国の故事「塞翁が馬」のようなものだったのかも知れないとも思えてくる。兎に角、くれぐれも主人公に思い入れ過多にならぬように注意しながら読むのが良いと助言したい。

Posted by ブクログ

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