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クロモフォビア 色彩をめぐる思索と冒険
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商品詳細
| 内容紹介 | |
|---|---|
| 販売会社/発売会社 | 青土社/青土社 |
| 発売年月日 | 2007/07/20 |
| JAN | 9784791763498 |
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クロモフォビア
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西洋美術では、白と黒を普遍・神性・完全・崇高と結び付け、色彩を表層的な欺瞞とみなす色彩嫌悪〈クロモフォビア〉の歴史が今も連綿と続いている。アーティストでもある著者が詩的かつシャープな文体で西洋の色彩観を捉え直した美学評論。 ロンドンのナショナルギャラリーがやっているポッドキャ...
西洋美術では、白と黒を普遍・神性・完全・崇高と結び付け、色彩を表層的な欺瞞とみなす色彩嫌悪〈クロモフォビア〉の歴史が今も連綿と続いている。アーティストでもある著者が詩的かつシャープな文体で西洋の色彩観を捉え直した美学評論。 ロンドンのナショナルギャラリーがやっているポッドキャスト「Stories in Colour」で著者が色彩嫌悪の話をしていて、面白かったので本書も読んでみることにした。 体系的な研究書ではなく、『闇の奥』や『白鯨』に見られる白の象徴性や、ウォルター・ペイターやシャルル・ブランのような美術評論家が色彩をどのように語ったかなどの引用を自在に繋ぎ合わせて、たとえば「カラー映画より白黒映画のほうがなんとなく〈芸術的〉っぽく見える」みたいな無意識のバイアス、あたかも大前提かのように共有されている色彩への軽視がどこからやってきたのかをコンパクトにまとめたエッセイである。 バチェラーは一応、デザイン(構図・線描)と対比して色彩を副次的なものとする思想のはじまりをプラトンとアリストテレスに求めているが、現代の私たちがうっすらと共有している「無彩色のほうが〈本質〉〈純粋〉っぽい」という色彩観が生まれたのは、やっぱりロマン派以降なのだろう。古代は色彩に満ちあふれていたはずなのに、近代の古代崇拝者は年月によって色を剥ぎ取られた白大理石の地の色を崇め、色彩は堕落だと語った。 本書に引用された文章によれば、色彩は表層・補足・装飾・外装、耽溺・陶酔・蕩揺・刹那、卑俗・悪辣・怠惰・不実であり、女・同性愛者・東洋人・原始人・子ども・賎民・狂人・病人のものであった。デザインは男、色は女にジェンダリングされ、色彩は人工の技に劣る「自然の言語」だった。 だが、白黒の人工世界に対して色にあふれた世界こそが「純粋な知覚」に身をゆだねたありのままの姿だとする色彩愛好者も現れ始める。無彩と色彩のあいだに人工と自然、秩序と混沌、意識と無意識という二項対立を前提にしている点で、色彩愛好は色彩嫌悪の裏返しでしかなかった。 この本ではあまり語られていないのだが、「Stories in Colour」のほかのエピソードも合わせて聞くと、近代の色彩蔑視・軽視は科学革命による合成顔料・染料の爆発的な発展と同時進行してきたのではないかと考えられる。街は色鮮やかなポスターで埋め尽くされ、婦人たちはカラフルなドレスを身にまとい、色彩は高尚なものではありえなくなった。そんな近代以降の色彩の大衆化を逆手にとって利用したのが20世紀のポップアートだった、というのが美術史的な流れ。 美術エッセイとしては谷川渥ふうの読み口でとても好みだったが、(意図的な構成だと思うが)自分たちを「中心」とみなしていた男性の文章ばかりが引用されているので、色彩と共に「周縁」とみなされていた人たちが西洋美術のコンテクストのなかで遺した言葉も知りたかった。特に化粧について書かれた章で、やんわりと女性性の話を避けて同性愛者に話をすり替えているあたりは不自然だと思う。訳注がないのも残念だった。
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ずっと積ん読にしていた本であったのだが、読んでみたらとても面白かった。もっと早く読めば良かったと後悔。アカデミックな論文というより、文献や映像資料を渉猟した、色彩に関するエッセイという感じ。訳者も「エステティック・エッセイ」と呼ぶべきものではないかと言っている。実際、著者は学者で...
ずっと積ん読にしていた本であったのだが、読んでみたらとても面白かった。もっと早く読めば良かったと後悔。アカデミックな論文というより、文献や映像資料を渉猟した、色彩に関するエッセイという感じ。訳者も「エステティック・エッセイ」と呼ぶべきものではないかと言っている。実際、著者は学者ではなく造形作家だとのこと。 本書のタイトルとなっている「クロモフォビア」とは色彩嫌悪症という意味。西洋における色彩嫌悪、さらにその反転である色彩愛好が、美術だけでなく文学や映画も含めた様々な資料を通して軽やかに描き出されていく。本書を読み進めていくと、日本に住む我々にとって西洋における色彩嫌悪の根強さには驚かされることも多い。実際、色彩は東洋と結び付けて考えられる場合が多いという。色彩嫌悪という観点は、忘れられがちではあるものの、西洋美術を理解する際に欠かすことができない重要な要素であるのは間違いないだろうし、『クロモフォビア』はそれを理解するのに大いに資する著作であるだろう。
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