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マグヌス
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マグヌス

シルヴィージェルマン【著】, 辻由美【訳】

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マグヌス

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 みすず書房/みすず書房
発売年月日 2006/11/10
JAN 9784622072553

マグヌス

¥220

商品レビュー

4.3

8件のお客様レビュー

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2018/07/07
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※このレビューにはネタバレを含みます

「子どもは五歳までにその一生涯に学ぶすべてを学び終えるものである」。ドイツの教育者・フレーベルの言葉だ。 『マグヌス』の主人公は五歳にして記憶喪失に陥り、その学んだすべてを失ってしまった。ナチス党員の夫婦に引き取られた彼は、 作り話の過去を吹き込まれて育つ。やがてドイツ帝国崩壊により一家は離散。自らの過去が偽りのものと知った主人公は、不確かなアイデンティティを抱えたまま長い旅に出る。マグヌスとは、彼が記憶を失う前から持っていたクマのぬいぐるみの名前。主人公とその真の過去との接点が、物言わぬぬいぐるみだけであることが切ない。 作中、主人公が夢中になる本に『ペドロ・パラモ』がある。メキシコの作家ルルフォが著した、実在する小説だ。名前しか知らない父、ペドロ・パラモを訪ねる「おれ」。行き着いた町に住んでいるのは死者ばかりで、あたかも生けるが如き彼らのささめきが、ペドロ・パラモの人物像とその土地の歴史を浮かび上がらせる。 時系列を重視せず、断片的な文章の積み重ねで物語を構築する点において、『マグヌス』は『ペドロ・パラモ』の小説技法を踏襲しているようだ。『マグヌス』では、通常の小説で「章」に当たる部分が、そのものずばりの「断片」と題される。各「断片」の合間には、作中に出てくる実在の都市や人物についての説明=「注記」、詩歌・本からの引用=「続唱」などが挿入され、架空の物語に現実的背景と文学的彩りを与える。また、冒頭の「序奏」では、自分自身が信じられない記憶喪失者の物語をどのように書けるか、そもそも「書く」ということは何か、著者自身が独白のように呟く。この醒めた視点と筆致のため、ストーリー性よりテキスト性が重視された作品という印象もある。 とはいえ各「断片」は波瀾に満ち、主人公が心通わす二人の女性との挿話や、思いがけない人物と邂逅する終盤の展開は非常にドラマチック。主人公は何かを得てはそれを失い、場から場へと彷徨う。幼少時の記憶喪失という体験は特異だが、その自分探しの旅路は普遍的で共感を呼ぶ。人が己を認識するために必要な「言葉」の重さ、そして頼りなさを考えさせられる話だ。 フランスの高校生が密度の高い議論を通して選ぶという「高校生ゴンクール賞」二〇〇五年の受賞作。

Posted by ブクログ

2015/05/26

http://blog.goo.ne.jp/abcde1944/e/7097d929d436ca4cee6d53f18a850b07

Posted by ブクログ

2012/08/25

序奏 断片 注記 続唱 反響 人物記 挿入記 重ね書き 章節の文頭にあたる部分にこれらの文字が見られる。 「断片」で、小説は進行し、 「注記」「続唱」で、それなりの説明がされ、詩や歌や小説などが引用される。 不思議な構成の本だ。このことに関して作者のシルヴィー・ジェルマンは、...

序奏 断片 注記 続唱 反響 人物記 挿入記 重ね書き 章節の文頭にあたる部分にこれらの文字が見られる。 「断片」で、小説は進行し、 「注記」「続唱」で、それなりの説明がされ、詩や歌や小説などが引用される。 不思議な構成の本だ。このことに関して作者のシルヴィー・ジェルマンは、 ---「断片という語が好きだからです。日常生活のわたしたちが何かを話すとき、それは常に断片です。アルバムを開いた時、そこに見るのは過去の断片です。人はいつも物語りの断片を知る。断片はパズルのように入り組んでいて、それを再構成するのは一人ひとりの自由にまかされているのです」--- と述べている。 彼女の自由で独自なこのスタイルに読み手はすぐに慣れる。 ストーリー性が実に豊かで、意表をつく展開に翻弄される。 時代背景は、時の流れとして変化していくが、ナチの収容所で働いていた医師とその妻、ふたりの子供にあたる人物がこの小説の主人公で、 題名の「マグヌス」は、ぬいぐるみのクマの名前である。 第二次世界大戦末期のドイツ、イギリス、メキシコ、アメリカ、再びイギリス、オーストリア、イタリア、フランスと「マグヌス」とともに私たちは長い旅に出かけるのだ。 戦争によって子供の出生の真実が隠蔽されてしまう。自分の本当の名を知らない。自分はどこからきて一体誰なのか。 これとテーマ性として同じなのは、W・G・ゼーバルトの   『アウステルリッツ』 だが、本書 『マグヌス』 は、 『アウステルリッツ』 とは違った非凡な独創的な方向へ進んでゆく。 本書の中で、W・G・ゼーバルトの文章の引用もあるので、シルヴィー・ジェルマンがW・G・ゼーバルトの 『アウステルリッツ』 を読んでいたことは確実である。 「マグヌス」色は薄茶でところどころオレンジかかっている。毛はかなり擦り切れ、片方の耳は焼け焦げたクマのぬいぐるみ。首の周りには「MAGNUS」という刺繍のしてある布が巻かれていた。 主人公の唯一の出生の実体化された形のあるものとして、「マグヌス」は彼と一緒に時を生きている。 本書は主体となるプロットに依存しない。 物語は流麗な動きをみせながら、どんどん走り出す。 シルヴィー・ジェルマンは、1954年生まれのフランスの作家。早くから作家として成功をおさめている。 本書も非常に完成度の高い作品で、世代を超えた読者を獲得できる小説に仕上がっている。

Posted by ブクログ

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