漱石の孫 新潮文庫

夏目房之介【著】

• 販売会社／発売会社: 新潮社/新潮社
• 発売年月日: 2006/05/01
• JAN: 9784101335124

商品レビュー

2024/09/22

夏目漱石の孫の視点から見た祖父や父への想いや葛藤が描かれている。世間では偉人である漱石であるが、そんな漱石であっても精神を病んだり、癇癪持ちだったりして普通の人間と変わらなかったのだなと思う。
孫の房之介が誕生したのは漱石没後であり、漱石が脚光を浴びたのは漱石没後であるので、著者の父と著者自身とでは漱石に対する向き合い方が違っており面白く感じた。
遺伝に抗えず、漱石を疎ましくさえ感じていた著者も人生の過程で気持ちが変遷しており会ったこともない祖父とのこのような向き合い方もあるのだなと得心した。
漱石はイギリス留学の最中、精神を病んで日本に帰国する。漱石自身は当時の体験により、イギリスに対して良いイメージを帰国後も持っておらず、漱石の家族親族もいわばイギリスを半ば夏目家の鬼門のように扱うが、それは当時の時代背景によるものも大きかったようだ。著者はイギリス訪問により、漱石や父をある意味赦したのだと思った。
今後、亡き漱石と父をどのように受け入れていくのか、またどのような感情を抱いていくのかその変遷が気になると感じた。

2014/07/09

マンガ家で、夏目漱石の孫である著者が、「漱石の孫」という運命とどのように向き合ってきたのかが語られています。

ＮＨＫの番組の企画で、漱石のイギリス留学時の足跡をたどることになったのが、本書執筆の動機になっているとのこと。近代の黎明期にイギリスを訪れ、文明との葛藤を一身に引き受けた漱石の心のうちに迫りつつ、現代の日本文化を代表するマンガやアニメといったサブカルチャーにおいて、近代以来の日本の置かれている位置を確かめなおすという、重層的な構成になっています。平明な文章で綴られているので、さらっと読み流すこともできますが、扱われている内容はかなり深いように感じました。

2014/01/01

有名人の一族は皆大変だということでしょう。
どうしたって巨大な存在がつきまとうだろうし、その中で自己アピールする困難さは常人では計り知れないことに違いない。
その大変さに免じて★3つ、内容はそれほど面白いものとは思えないかな。