父のことば 光文社文庫

宮本輝【選】

• 販売会社／発売会社: 光文社/光文社
• 発売年月日: 2006/06/12
• JAN: 9784334740740

商品レビュー

2018/12/22

「父」をテーマとしたエッセイ五百数十篇の応募作の中から宮本氏によって厳選された三十三篇が収録されている。宮本氏は、三十三人の子が書き留めた三十三人の父の姿を垣間見ることにより、自分と父の関係あるいは父である自分と子の関係を見つめる契機にならんとするよう編纂したと想われる。父とはかくも十人十色、千差万別でありながら、古今東西を問わず妻や子のために下げたくない頭を下げ疲れた心身に鞭打ってひたすら働き続ける存在であることに気づかされ、子の父を想う気持ちに共感する。「若気の至りとはいえ私は一生父に謝り続けるのであろう」、「思い出は祈りに似ている」、「娘に擦ってもらっているときには心が安らぎ、息子に擦ってもらっているときには体が安らぐ」「父の終わってしまった人生がゆっくりゆっくりと私に覆い被さってきている」。そこには、報道などで垂れ流される殺伐とした親子関係とは明らかに異なる温かい血の通った親子関係がある。深谷氏の「鞴祭」、安藤氏の「足音」が秀逸。

「私は他者に幸福を齎す方法として、固体の持つ永続性よりも、むしろ液体の瞬間的な儚さの方を愛したのに過ぎない」

2007/08/18

そういう年なのか、子供の目から見る親への思いよりも親の目線でこういう父親でありたいと思う側の記述が心に残ります。