バグダッド燃ゆ 岡野弘彦歌集

岡野弘彦【著】

• 販売会社／発売会社: 砂子屋書房/砂子屋書房
• 発売年月日: 2006/07/07
• JAN: 9784790409076

商品レビュー

2022/01/22

國學院大學名誉教授。

※國學院大學
　https://opac.kokugakuin.ac.jp/webopac/BB01049673

2021/06/13

岡野弘彦は、戦争中、少年航空兵と起居を共にした。そして彼らは還らなかった。それを哀しみ、繰り返し歌う。彼の原点であり、それを見つめ続ける大切さを知った。「夜ふけて　餓鬼田の水につどひ寄る　親のくるしき吐息　聞こゆる」「ひげのしずく払へば　たんと舌に鳴る　この旨し酒。友よ訪ひ来ね」「ほろびゆく炎中の桜　見てしより、われの心の修羅　しづまらず」「空を飛ぶ夢を　このごろ見ずなりて　わが雄ごころの鎮まるらしき」「わが友の面わ　つぶさに浮かびくる。爆薬を抱く　少年の顔」「ゆかり人葬りしのちに　ゆくりなし。たましひの鳥の　飛ぶを見にきつ」「わが打ちしシュート、ネットに吸はるるを　老いの眠りの夢に見てをり」「かかる世に替へし　われらの命かと　老いざる死者の声　怨みいふ」「泣きぼくろ　また泣く母は、うら若き十八にして　われを生ましき」「少年の夜ごとの夢に　かがやきし、しろがねの馬。昭和遠のく」「よるべなく　ほろびし国を漂白（はふれ）ゆく。死におくれたる　無用者われ」「ただ独り　異郷の街にまぎれ住み　耐へがたかりし　茂吉おもほゆ」「子孫（うみのこ）は　みなちりぢりに失せゆきて　祖（おや）の墓所（はかど）は秋萩の原」「ただ一人残る媼も死にはてて　夜ごと饐えゆく　大き味噌樽」「軍人（いくさびと）　政治家（つかさびと）　みなおろかにて　悲歌うたはせて　国は敗れき」「ひねもすを　曽孫におしへ余念なし。火遁　水遁　壁ぬけの術」「ごろすけほう　さすらひ井でし魂の　あなよるべなし。ごろすけほう」「み祖神（おやがみ）　内は洞（ほら）ほら　外は統ぷすぷ　われの十月（とつき）をはぐくみましき」「母逝きてのちの二十年（はたとせ）。年ごとに身によみがへるなげき　　あたらし」