夜のジンファンデル

篠田節子【著】

• 販売会社／発売会社: 集英社/集英社
• 発売年月日: 2006/08/30
• JAN: 9784087748086

商品レビュー

2023/12/30

1991〜2002年に「小説すばる」に初出された５作品をまとめた短編集だ。
一編だけ、新潮文庫から発刊された「恋愛小説」に収められた作品が加わっていて、作風が当然ながら異なっていた。
この短編集の中で、私はこの『 夜のジンファンデル 』が最も印象深かった。
まさに形にまでは至らなかった大人の恋が綴られていた。

◉夜のジンファンデル（2005年1月 新潮社）
私と百合子は、大学時代から30年間以上のお付き合いが続いている。
私がアメリカ一人旅を楽しんだ折、アメリカに単身赴任している百合子のご主人である隆に連絡を取らざるを得ない状況になった。
百合子から教えてもらった電話番号に連絡すると、隆は4時間以上かけて私のもとに駆けつけてくれた。
その時、隆の好意を越えた気持ちを私は告白された。

篠田節子女史は、世の中に隠れながらも大きな問題をテーマにした作品が数多くある。
この一冊に収められた6編の物語でも、パワハラ、大規模開発による弊害、男女平等の問題、高齢者問題、人口の流出問題などが含まれているように思う。
ただ一編、「夜のジンファンデル」の物語は、とてもお洒落な大人の恋が綴られていた。
さすが篠田節子女史だ。
因みに「ジンファンデル」とは、カリフォルニア在来種の葡萄のことだそうだ。

2018/08/09

短編集。タイトルの話だけがよかった。「夜の」の意味と必要性がわからないが、主人公の女性の設定、既婚子どもがいない、など説得力がある。そうでない女のひとならありえない。

2016/04/05

「永久保存」 汚職で左遷された市役所の課長が嵌まった身の毛もよだつ罠とは…
「ポケットの中の晩餐」 落ちぶれて地元に帰ってきた男を待っていたのは…
「絆」不倫相手から手切れ金がわりにもらったマンションにあった大きな冷蔵庫が見せた幻とは…
「夜のジンファンデル」友人の夫との秘めた関係の行く末とは…
「恨み祓い師」恨みを生きる支えとして生き延びた老母と母の呪詛を受け止めるためには生きてきた娘の人生とは…
「コミュニティ」ゴーストタウンと化した団地に女達が作り上げたコミューンとは…
６つの短編のどれもが、ひんやりして背中がぞくっとする作品だった。洗練された大人のホラー。