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ショスタコーヴィチ全作品解読 ユーラシア選書4
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ショスタコーヴィチ全作品解読 ユーラシア選書4

工藤庸介【著】

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ショスタコーヴィチ全作品解読 ユーラシア選書4

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 東洋書店/東洋書店
発売年月日 2006/09/25
JAN 9784885956454

ショスタコーヴィチ全作品解読

¥1,980

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2016/11/10

ショスタコーヴィチについて語るときについて回るのは、その政治的背景である。少なくとも私が親しむようになってからは(ソ連が崩壊前後の時代はともかく)今現在でも、ほとんどの解説でそれが枕詞のように語られる。この本の著者もそれを提起していて、「まるでソ連の現代史を読んでいる化のような評...

ショスタコーヴィチについて語るときについて回るのは、その政治的背景である。少なくとも私が親しむようになってからは(ソ連が崩壊前後の時代はともかく)今現在でも、ほとんどの解説でそれが枕詞のように語られる。この本の著者もそれを提起していて、「まるでソ連の現代史を読んでいる化のような評論」「そうした社会との関係を抜きにして彼の音楽を聴いてはいけないかのような錯覚に陥らせる」と述べている。同様な疑問を持った人は多いだろう。特に音楽評論家のちょっとした解説で同じような内容を量産しているのを見かけることが多い。なぜ同じような解説を繰り返すのか? それは音楽評論家を名乗っていても踏み込んだ研究をしていない、もっと端的に言えば知識に欠ける人が多いのではないか? とも思っている。 著者の工藤庸介氏は音楽の専門家ではなく、ヴァイオリンをたしなむ音楽愛好家である。しかし、これほど広範囲にショスタコーヴィチの音楽を聴いて、多くの文献を調べている「評論家」は、実は少ないのではないだろうか? 著者が前述のワンパターンなショスタコーヴィチ解説を越えた紹介本となっているのは、「評論家」に勝る知識があってのものだろう。いろんな情報にアクセスが容易になったネット時代にあって、筆者のような、あるジャンルについて評論家を越える「超」愛好家は今後増えるのではないか。 本の内容は生涯から、ジャンル別に分けられた全作品の簡単な紹介とその推薦盤(これが著書の大部)、年譜、参考資料案内、作品一覧からなる。 ショスタコーヴィチは膨大な作品を残し、私的には恐らく今後もとても全部は聴ききれないので、この簡潔だが的確な紹介は全体像の把握にとても役立つ。 また政治性社会性にも、(前述のワンパターン言説とは違った)音楽の二面性についても簡潔に解説しているのも、作品に対する関心を書き立てる。 推薦盤はムラヴィンスキーなど同時代を生きたソ連の演奏家のものが多く推薦されているが、私見でもこのあたりの録音が音楽に込められた思念の描き込みの深さで傑出していると思う。 笑ったのがロジェストヴェンスキー指揮のソヴィエト国立文化省交響楽団を「上手いのか下手なのかわからない」と評しているところ。このコンビの全集は、ふざけてるのか深刻なのかわからないようなルパートやリズムなどなど、他のソ連系録音とは一線を画す様なところがある。他の指揮者が深刻さ厳格さを主に表出しているのにたいして、ドンチャンと悲しみが入れ替わり現れるような強いアイロニーを感じて、個人的には決定盤的全集なのだ。汚いのか分からないでも技巧的に冴えている阿鼻叫喚の音と、バブル期当時イケイケの日本電気産業であるJVCが持っていった、当時珍しかったデジタル機材の録音が他には聴けない全集になっている。しかしあまり評価は高くなく、取り上げられることも少ないは再評価されるべき。(以上は私見) とにかく、一般愛好家を対象にしたこのショスタコ紹介の秀作労作をちょくちょく参考にしながら、ショスタコーヴィチという一筋縄ではいかない音楽と付き合っていこうと思う。

Posted by ブクログ

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