転移分析 理論と技法

マートン・M.ギル【著】, 神田橋條治, 溝口純二【訳】

• 販売会社／発売会社: 金剛出版/金剛出版
• 発売年月日: 2006/05/30
• JAN: 9784772409155

商品レビュー

2016/03/06

転移の理解を基軸に、いまここの解釈と発生論的解釈を介入として記述し、転移解釈と転移外解釈を論じる。すべての素材が転移をコミュケートするという想定のもとに、転移を扱っていくのだが、この本だけでは、明瞭に理解はできないだろう。第2巻の未翻訳の逐語録を併読してこそ、臨床的な読みができる。本翻訳のみの理解は錯覚に近い。
転移に気づくことへの抵抗、転移に入ることへの抵抗、転移を解消することへの抵抗を、それぞれ解釈していくのだが、この点でクライン派と軌を一にする。しかし、クライン派の転移解釈は、実際は幼児期にまつわる無意識的幻想の再構成であると喝破し、自身の論との差異化を図る章が、本巻のハイライトであろう。自我心理学の伝統を纏いつつも、対人関係論の次元に接近したギルの技法書として、名高い本書だが、残念なことに翻訳がいまいち。是非原著を合わせて読むことをすすめる。また、ラカン派のフィンクが、本書を批判しているので、興味があれば、そちらも読むと理解が深まるだろう。

2013/03/21

　表題の通り「転移分析」に焦点を絞り、徹底的に論及している。全体的にラディカルな言い回しで、読んでいて子気味いい。本書では、転移に関する様々な論文を引用しているが、フロイトの理論についての再考は、とても興味が惹かれた。中でも、精神分析の技法は、フロイトの初期の著作から変化はしておらず、変化しているのは理論であり、それらは区別すべきだという論考には唸らされた。
　精神分析は様々な理論で溢れているが、本書はそういった理論の（つまりは臨床の）原点に立ち返る意味でも重要な著作といえるのではないだろうか。