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小さな町 大人の本棚
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小山清【著】, 堀江敏幸【解説】

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 みすず書房/みすず書房
発売年月日 2006/10/10
JAN 9784622080718

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2013/05/05

小山清さんは1911年生まれ。元号でいうと明治44年の生まれになる。だから今とは違う景色と人物が在る。私はこういう古い時代のものが好きなので楽しく読めた。 この本には『小さな町』をはじめ、計10篇の短篇が収められている。 最初は主人公の性格というか人物像に馴染めなかったけど、読...

小山清さんは1911年生まれ。元号でいうと明治44年の生まれになる。だから今とは違う景色と人物が在る。私はこういう古い時代のものが好きなので楽しく読めた。 この本には『小さな町』をはじめ、計10篇の短篇が収められている。 最初は主人公の性格というか人物像に馴染めなかったけど、読んでいくうちに小山さんの世界観がわかってくる。 だから感じ方としてどんどん良くなって、最後に収められている『夕張の春』はさらに若者の初々しさがプラスされた心温まる作品となっていて、読後感が良かった。 * * * * * 小山さんの作品はどれも主人公だけでなく登場する多くの人が「ふつう」の人として飾る事なくそこに居る。そこに数人の「ふつう」より光る魅力のある人が居て、それが作品のアクセントとなっている。 語り手が惹かれるのはみな弱き者たちで、当然語り手自身もその者たちに等しい存在である。そしてそれは私のような読み手とも等しく、読み手は親近感を抱き心が慰められ支えられる。 堀江敏幸さんが解説で「ふつう」の人たちを描く小山さんについて分かりやすく説明してくれていて、解説を読んで「まさにその通り」だと思った。 そこから少々抜き出しながらまとめてみると、 《 小山清は、「平凡」を、世間一般の「ふつう」とは区別しようとする。 『小さな町』で彼がやろうとしているのは、単にうつくしい過去を振り返ることではなく、「ふつう」や「平凡」として片づけられているものに、ほんとうの力と光を当てようとして 》いる。 小山さんの言う「平凡」は、最もいい景色は平凡な景色だというような意味での「平凡」で、欲が深いと「平凡」にはなれず、なることがむずかしいものだと言う。 私は読んでいる中で「ふつう」ではない「平凡」の人がキリストのような存在として在るように感じた。 《 なにがしか欠損のある弱者ばかりである「ふつう」の彼らはみな「ふつう」であることを「ふつう」に生き、理想的な「平凡」のレベルを目指そうとはしない。 》 《 身体の、心の汚れは汚れとして認めたうえで、みずからの「ふつう」に向き合うこと。「おぢさんの話」は、背伸びをして自分を完璧な「平凡」に近づけようなどと気負わず、背骨の曲がりは曲がったまま、首のゆがみはゆがんだまま、鈍い頭は鈍いままで生きていこうという勇気を与えてくれる一篇だ。この強さと弱さを双方兼ね備えて、なおかつ人の上に立たないという静かな覚悟こそが、短篇集『小さな町』の隅々にまで張りめぐらされた道標なのである。 》

Posted by ブクログ

2010/06/07

興を逸らさぬ筋がある訳でも文章が巧い訳でもないのに何故か味わい深いのは、吐露される筆者自身の心情描写があまりにも素直で衒いがないからか。新聞配達を通して知り合った街の人々との交流や、炭坑暮らしで知った人間の奥深さ、人の温かさ。結局すべてのドラマのおもしろさは人間のおもしろさに収斂...

興を逸らさぬ筋がある訳でも文章が巧い訳でもないのに何故か味わい深いのは、吐露される筆者自身の心情描写があまりにも素直で衒いがないからか。新聞配達を通して知り合った街の人々との交流や、炭坑暮らしで知った人間の奥深さ、人の温かさ。結局すべてのドラマのおもしろさは人間のおもしろさに収斂されるもので、本作はそこを過たず捉えているのだろう。

Posted by ブクログ

2010/02/28

 太宰治の弟子兼研究者として知った作家。太宰が題をつけた「離合」という作品もあるというから、最初は太宰の片鱗みたいなものを密かに期待して読んでいたのだと思う。しかし「二人に共通するなにか」を探そうとする姿勢はすぐに打ち砕かれ、小山さんのこのささやかで素朴な文にのめりこんでしまった...

 太宰治の弟子兼研究者として知った作家。太宰が題をつけた「離合」という作品もあるというから、最初は太宰の片鱗みたいなものを密かに期待して読んでいたのだと思う。しかし「二人に共通するなにか」を探そうとする姿勢はすぐに打ち砕かれ、小山さんのこのささやかで素朴な文にのめりこんでしまった。中学1年生の夏に、井上靖の「しろばんば」が読み易くて読み易くて驚いたが、久しぶりにどこか通ずるところを感じた。  堀江敏幸さんによる解説「『ふつう』と『平凡』をかけあわせて」にあるように、この小山さんの作品は単に美しい過去を振り返ることではなく、「ふつう」や「平凡」として片付けられているものに、ほんとうの力と光を当てようとする小声のマニフェスト。数奇な運命、破天荒な人を描いては、注目されよう。でもそうじゃない。音楽で言えば、技巧巧みであらば、新しい事に挑戦すれば、注目されよう。メジャーコードだけで、目立たぬ個性の、だけどいい曲、というのが一番難しい。「普通の人」の印象の強さが心にしみいる。ひどく心揺すぶられたのだが、粗い私の文では表現できない。ツンツン、と親の腕をつつき、小山清氏を知らないという二人にすすめることにした。    前半の「小さな町」「をぢさんの話」「西郷さん」「離合」「彼女」は読売新聞の新聞配達員時代の話を、そして、新聞配達の追憶から始まる「よきサマリア人」を挟んで、「道連れ」「雪の宿」「夕張の春」は北海道夕張炭坑での炭坑夫の話が収録されている。この作品の順番は決していじってはならない。 元は1954年筑摩書房から刊行された本のようだ。みすず書房は良い本を出すなぁ。

Posted by ブクログ

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