1,800円以上の注文で送料無料

一階でも二階でもない夜 回送電車 Ⅱ
  • 中古
  • 書籍
  • 書籍
  • 1220-05-06

一階でも二階でもない夜 回送電車 Ⅱ

堀江敏幸(著者)

追加する に追加する

一階でも二階でもない夜 回送電車 Ⅱ

定価 ¥2,090

770 定価より1,320円(63%)おトク

獲得ポイント7P

在庫なし

発送時期 1~5日以内に発送

商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 中央公論新社
発売年月日 2004/06/10
JAN 9784120035364

一階でも二階でもない夜

¥770

商品レビュー

4.3

9件のお客様レビュー

レビューを投稿

2013/03/10

意味があるようなないような、翻訳詩にでも出てきそうな曖昧なタイトル。副題に「回送電車Ⅱ」とある。以前に出した同名のエッセイ集の続編である。そういう意味でつけたのなら、その意図するところは分からないでもない。かつて、その『回送電車』の中で、作者は階段の踊り場に寄せる愛着について語っ...

意味があるようなないような、翻訳詩にでも出てきそうな曖昧なタイトル。副題に「回送電車Ⅱ」とある。以前に出した同名のエッセイ集の続編である。そういう意味でつけたのなら、その意図するところは分からないでもない。かつて、その『回送電車』の中で、作者は階段の踊り場に寄せる愛着について語っていた。それは、煌々と灯りをともしながら、そこにいるべき乗客を乗せずに走り続ける回送電車にも通じる、ある種の居心地の悪さを意味している。「一階でも二階でもない」のは、小説ともエッセイともつかない作品を書いている作家の置かれた位置を表していたのである。 『一階でも二階でもない夜』は、主に新聞、雑誌、その他に求めに応じて書かれた短い文章をまとめて編まれたエッセイ集である。四つの章に分けられているが、その分類は大まかにいえば、東京風景、文学芸術評、パリ風物、身辺雑記とでもいえようか。どちらかといえば、相手の注文に合わせて書かれた請け負い仕事という感じもする随筆風の文章が集められている。次々と文学賞を取り、仕事の注文をこなすのに忙しい流行作家の横顔が見えてきそうだ。 ところが、意外なことに、作家は、自分の仕事を、いきあたりばったりなもので「企画書が書けませんでしたという始末書」を丁寧にしあげようと努力しているようなものだ、と評する。そして、「ときに技巧が勝りすぎると思われるほど計算されて」いると評される自分の仕事について、相手の誤解に対する苛立ちを隠せないでいる。「しかしそれほどの技巧と計算力が備わっていれば、わたしだっていまごろは立派な物語作者になっていたはずではないか」と。自己韜晦をしているわけではないらしい。「存在の明るみに向かって」という、宇佐見英治を追悼した文章の中で、その文章を引いている。 以前、或る長いエッセーを書いたとき、当時著名であった先輩の文芸評論家から、きみの書いたものはおもしろいが、結局何をいいたいのか、結論がないといわれたことがあった。あたかも行為には必ず結果があり、人の一生や歴史はある結論に達するためにある、といわんばかりに。かかる実務家まがいの俗流には、錬金術師に倣って《四角い円》circulus quadratusを夢みているのだといっておこう。(『方円漫筆』) 宇佐見英治という人を、迂闊なことに知らなかったのだが、面白いが結論がない、というのは堀江敏幸その人に対する評とおおむね重なろう。結論が予めあって、それを導くために書くのではない。自分が今どこにいて、どう感じるのかを探り続けた結果が、作品として成立する。自分が感じていたことをかくもあざやかに表明されていることに新進作家がどれほど勇気づけられたか想像するに難くない。 物語作者かどうかは知らぬが、「スタンス・ドット」で川端康成賞を、それを収めた『雪沼とその周辺』で木山捷平文学賞を受賞したあたりから、堀江敏幸にも、というべきか、日本の短編小説作家的なものが期待されるようになった。古書店巡りを題材に採った一編にも小沼丹や島村利正に対する関心について言及した部分があるように、作家自身あらためて、この国の文学地図の上に標された自分の位置を探りはじめているようなのだ。 先に引いた宇佐見の別の文章。「方位でもなく方角でもなく方向。定位ではなく定向。それが今日の人間の行動を律する主要な指標となった」という言葉が、ことのほか身に浸みた、という堀江である。自分の位置がどのあたりにあるのかを探っても、それを自分の進むべき方角と勘違いしたりはしないだろう。たとえ、筋らしい筋や、結論がなくとも、面白いと感じられるなら、そこには何かがあるはずだ。今一度宇佐見の文を引いておこう。 「もし私の書くものに何らかの真実があるとすれば、それは森の下蔭に、言葉の岩肌の間に隠されているはずだ。私がそう望んだためではない。存在(ザイン)は、もしそれが真の存在であるなら、自ずと隠されてあることを、秘匿されることを希うからだ。」 日本文学プロパーには逆立ちしても書けぬ硬質な気韻のようなものを、堀江にはいつまでも持ち続けていてもらいたいと思うのである。

Posted by ブクログ

2012/03/04

堀江敏幸「一階でも二階でもない夜/回送電車Ⅱ」読んだ。http://tinyurl.com/3asqxpl 読書会で知ってすっかりお気に入りになった人。とにかく文体が好き。大真面目な顔で淡々と冗談を言われているような感じがするのは、読書会の課題図書「おぱらばん」と同じだ。(つづく...

堀江敏幸「一階でも二階でもない夜/回送電車Ⅱ」読んだ。http://tinyurl.com/3asqxpl 読書会で知ってすっかりお気に入りになった人。とにかく文体が好き。大真面目な顔で淡々と冗談を言われているような感じがするのは、読書会の課題図書「おぱらばん」と同じだ。(つづく 相変わらず創作なのか身辺雑記なのか判断不能で、日常の瑣末事を取り上げて、大仰に、でも飄々と語られる内容は知的な人の悪ノリのようで、読んでいて楽しい。出てくる他の本や映画も見てみたくなる。エッセイは1冊通して読むうちに途中で飽きることがあるけれど、この人のはそれが無い(今のところ)

Posted by ブクログ

2011/12/17

百年で行われたトークショーに参加した帰りに読み終わった。トークショーとはメモを片手に聞かねばならぬのかと驚きつつ、しかし来ている人達が題目となっている人のファンなのか堀江さん目当てかは不明。ご本人は文字での印象よりもよどみなく喋る人だった。本人を拝見して、エッセイの読み方、という...

百年で行われたトークショーに参加した帰りに読み終わった。トークショーとはメモを片手に聞かねばならぬのかと驚きつつ、しかし来ている人達が題目となっている人のファンなのか堀江さん目当てかは不明。ご本人は文字での印象よりもよどみなく喋る人だった。本人を拝見して、エッセイの読み方、というか書いている人の思考速度に自分を軌道修正する、というのも面白いかもと思った。

Posted by ブクログ