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開高健全集(13) 日本人の遊び場
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商品詳細
内容紹介 | 内容:日本人の遊び場. 飲みたくなる映画 ほか. 書誌 |
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販売会社/発売会社 | 新潮社 |
発売年月日 | 1992/12/05 |
JAN | 9784106452130 |
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開高健全集(13)
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ナイター釣り堀 p69 情熱は静かに充実して しばらくしてから、おっさんは、薄暗い桟橋の向こうに座っている黒シャツの若い男を指差した。あれは学生やがここの常連でプロ級や。いつも十二キロぐらいしかつれ編と言いながら図ってみたら十四、五キロも釣っとる。にくい客やが人寄せにはええや...
ナイター釣り堀 p69 情熱は静かに充実して しばらくしてから、おっさんは、薄暗い桟橋の向こうに座っている黒シャツの若い男を指差した。あれは学生やがここの常連でプロ級や。いつも十二キロぐらいしかつれ編と言いながら図ってみたら十四、五キロも釣っとる。にくい客やが人寄せにはええやろと思てしぶしぶ入れてまんねん。言われてみると黒シャツの青年ンは桟橋に端然と胡坐をかき、左手を膝に、右手を竿尻に、背骨正しく古武士のような姿勢で、ほとんど一分か二分おきに正確に魚を釣り上げ続けていた。そのすぐ隣の中年男は十分か十五分おきに一匹釣って、オタオタとしていた。わずか二人は五十センチも離れていないのにそういうことが起る。これが釣り堀の神秘、いや、釣りそのものの神秘というものである。 その静寂さにおいて釣り堀は日本人の現代の遊び場のなかで筆頭に上るものだろうと思う。碁会所は麻雀屋よりはるかにしずかだが、それでも唸りや、呻きや舌打ちや、ひとりごとや、短い罵り声などが、もうもうとたちこめるタバコの煙の中に出没している。 もし騒音が情熱の必要悪みたいなものであって、欠かすことのできない副産物であるとし、“レジャー”場の最大の特徴だとするなら、テクニランド(多摩テック)のモト・クロスやパチンコが最前衛、釣りが、その最後衛だということになる。けれど充実した孤独を求める熱中度において、日本人をひきつけるということでは、釣りはオートバイに劣らない。いや、それと匹敵するものですらある。夏場のナイター釣り堀は年を追って増加するばかりである。尊敬すべきヘラブナ諸君はいよいよ老獪になり、いよいよ人間様なみに神経衰弱になってくる。人間様は諸君の老成ぶりにいよいよスリルを覚えて駆けつけてくる。 だから、諸君、どうせ夏の昼間は暑くて人間様も手が出せないのだから、そのあいだにグッスリ水藻のなかで眠っておけばよいのだ。なんでもない。昼と夜が入れ替わっただけのことじゃないか。池の外の世界ではしょっちゅうあることさ。諸君は好敵手を発見するよ。
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