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永劫回帰 創元推理文庫
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 東京創元社/ |
発売年月日 | 1991/05/31 |
JAN | 9784488697020 |
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永劫回帰
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永劫回帰
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全身をコロネード哲学に基づく改造技術で強化された<シップキーパー>ヨアヒム・ボアズが生きる宇宙は、単一の歴史を無限に繰り返すことが科学的に証明されている世界。ある事件がきっかけで人間の限界を超える苦痛を味わってしまったボアズは、永劫回帰する宇宙の中で同じ苦痛を何度も味わう地獄から逃れるため、この宇宙の構造自体に絶望的な戦いを挑む。時は今しも、時空を超えた光景を映し出す「時間石<タイム・ジェル>」が採取されると言い伝えられる伝説の<放浪惑星>メアジェインが300年ぶりに姿を現した。現状の宇宙を維持するために時間にまつわる一切の研究を禁じている<帝国>の巡洋艦がメアジェインに迫る中、タイム・ジェルを獲得せんとボアズは出航する。風雲急を告げる銀河辺境で、ボアズが挑む無謀な戦いの結末や如何に? ワイドスクリーン・バロックです。実にワイドスクリーン・バロックですヽ( ´ー`)ノ 全身の骨格を珪素素材に替え、その中にADP:自動データ処理装置を詰め込んだ超人ヨアヒム・ボアズ。この主人公のキャラ設定だけでもぅ十分SF1本書けるだけのネタになると思うんですが、そんな主人公を迎え撃つのが「同じ歴史を無限に繰り返す宇宙」という、壮大過ぎるにも程がある舞台設定ヽ( ´ー`)ノこれ、ニーチェの「永劫回帰」思想とはもちろん全く無縁のシロモノでして、作中に登場する独特の哲学「コロネード」もベイリーお得意のトンデモ思想なのであまり深く考える必要はありません(笑)でも、タイトルを「永劫回帰」としたのは名意訳ですね。主人公ボアズを最後まで苦しめるのが、この「永劫回帰」する宇宙なわけですから。 他にも、かつて重傷を負ったボアズの生命機能を維持するために常時接続されている「船」、恒星が高密度で密集しまばゆい光を放っている「光輝星団<ブリリアンシー・クラスター>」、その内部に発生する不安定な重力に引っ張られながら計算不能の不規則な軌道を描く<放浪惑星>メアジェイン、ADPと同様のデータ処理能力を持ちながら知性の有無すら判明していない宇宙生物<ベーム>、そして物語の重要な鍵となる、今ここではない時空の光景を映し出す美しい<タイム・ジェル>・・・舞台設定がどでかい分、詰め込まれたアイディアもスケールの大きなものばかりです。 頭がクラクラするようなアイディアの洪水。しかも、物語の重要な鍵となる<タイム・ジェル>は、中盤で「役に立たなかった」の一言と共にあっさりフェード・アウト(爆)。放浪惑星メアジェインも、<タイム・ジェル>採取後は一切話題にも上らない有様。ベームに至っては完全に忘却の彼方。広げに広げた大風呂敷を回収する気は全く無い、これぞワイドスクリーン・バロック! こんな感じで、実に華々しくぶっ飛ばす期待通りの作品なわけですが、読了した鴨がこの作品から受けた印象は、実は思ったよりも地味でした。 何故かと振り返ってみるに、まずひとつには、ボアズが戦いを挑む対象があまりに抽象的過ぎて、彼が何をどうしてどのように闘っているのか今ひとつ掴み切れなかった点。肝心の<タイム・ジェル>は、途中からなかったことにされちゃってますしね(^_^;いろいろ詰め込んでいる作品ではありますが、ストーリーの主幹は主人公の復讐譚です。そうであるからこそ、復讐の過程をもっとスッキリ痛快に追うことができれば面白さ倍増だと思うんですけどね。 もうひとつ、この作品最大の仕掛けである「永劫回帰する宇宙」という舞台設定を、物語後半でボアズ自身が否定しちゃってるんですね(最後の最後でまたどんでん返しがありますが、そこは読んでみてのお楽しみ)。しかも、可愛い女の子から「宇宙が繰り返してるなんてどうしてわかるの?繰り返してないかもしれないじゃない」と問いただされて「そうか、繰り返してないかもしれないな!」と納得してしまうというハードルの低さ!(^_^;そんなに簡単にひっくり返しちゃっていいのかベイリー!ここで、物語の説得力が一気に失せましたね。いや、ワイドスクリーン・バロックに説得力を求める方が無理ということは重々承知しておりますが(笑)それでも一定の説得力を物語に確固として持たせているのがベイリー独自の魅力だと鴨は思っていますので、その点では若干の物足りなさを感じましたね。 そんなわけで、大好きなベイリー作品なのでわくわくしながら読み進めたんですが、全体的には微妙な感じ。アイディア爆発のトンデモSFとしては十分楽しく読めますので、そこは誤解なきよう!SF読み上級者向けの作品ですねー。
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宇宙を旅する男キャプテン=ヨアヒム・ボアズは、不具だった身体を哲学者コロネーダーらによって改造されていた。それは珪素の骨をとりつけられた一種の超人である。しかし不慮の事故のため珪素骨と感覚器官の痛みを感じる機能が結合、地獄の苦痛を延々と味わうことになってしまう。宇宙が定められた...
宇宙を旅する男キャプテン=ヨアヒム・ボアズは、不具だった身体を哲学者コロネーダーらによって改造されていた。それは珪素の骨をとりつけられた一種の超人である。しかし不慮の事故のため珪素骨と感覚器官の痛みを感じる機能が結合、地獄の苦痛を延々と味わうことになってしまう。宇宙が定められた円環構造を幾度も繰り返すため、同じ苦しみを何度も味あわなくてはならなくなった彼は、ある決断をする。 宇宙の円環をぶち壊し、苦痛から解放されるのだ。 バリントン・J・ベイリーのワイドスクリーン・バロック、The Pillars of Eternityの邦訳だ。巻末の解説で述べられているとおり、一人の男が宇宙を相手に闘いを挑むというびっくりするようなスケールのでかい宇宙SFである。並大抵の作家なら思いついてもバカバカしくて書かないような途方もないスケールのSFをマジで書いてしまうのが奇想の作家ベイリーなのである。 しかもとんでもない冒険物語を描きながらも、哲学の領域にまで足を踏み込んで、運命論のようなものまで論じてみせる。そもそも「永劫回帰」という言葉自体ニーチェの思想である。科学理論などもどことなくハッタリで煙に巻かれている気もするのだが、ベイリーは力技で宇宙をねじ伏せる。 かくして主人公ボアズは宇宙の時を操る力をもつという宝石<時間石(タイム・ジェル)>を求めて壮大な冒険を繰り広げることになるのである。 [わからんのか? 宇宙はくりかえすんだぞ。過ぎさったものはすべて、くりかえしくりかえし、永遠に再現されなければならんのだ。過去はおれたちのまえにあるのだぞ](p152) [おれは未来を変えなけりゃならん―宿命を破壊し、時間を新しいレールのうえに置いてやるんだ](p153) 主人公が超人になったのはいいが、そのおかげで激しい苦痛に苛まれる羽目になる、というのが皮肉である。超人であるがゆえに味わう恐ろしいほどの苦痛。我々には想像もつかないような苦しみだろう。 その上ボアズは自らの宇宙船と機能的にリンクしており、文字通り宇宙船と運命共同体であるという設定も秀逸。だからこそ彼は自らを『シップキーパー(宇宙船管理者)』ではなく『キャプテン(船長)』と呼ぶ。 自らの、宇宙の運命と立ち向かうボアズのもとには様々な仲間が集い、個性的な的が立ちはだかる。ボアズは果たして目的を達成できるのか。 経済帝国、光輝星団、放浪惑星(ワンダラー)メアジェイン、鳥頭人(アイビス)…。ベイリーらしい様々なネタ(アイデア)が惜しげもなく投入され、読者を幻惑の世界へ引きずり込んでいく。これだけ濃密にネタを詰め込んでおきながら、300ページ以内というスリムさで大風呂敷を畳んでいる手際の良さは、何かと長大になりがちな最近のSF作家には見習ってほしい。 ベイリーは何事も出し惜しみしないし、どんな無謀な事にも本気だ。そう、そしてベイリーは反抗的だ。それは権力者に対する怒りとか、恋敵に対するライバル心とか、そんなスケールの話ではなく、自然界の法則とか、科学の限界とか、そういう人間の力ではどうしようもないような事に腹を立ててみせるのである。 解説で中井紀夫が記している通り、自分が我慢ならない事には本気で挑む。宇宙が同じ歴史を繰り返し繰り返しているなんて我慢できん!となれば相手が宇宙だろうが容赦しない。そんな反抗心がベイリーの書くSFの魅力の1つでもある。 作中、ある登場人物の手のひらに【勝利などだれが望むか】という言葉が烙印がされているのだが、これなんか実に反抗的だ。 [よいか、宇宙の進路を変えられるのは神のみであるからして、結果的にそなたは神になる方法をたずねておるのだぞ](p195) [わたしたちは無鉄砲な人種です。だれかが、どこかで、直視できないほどの問題に敢然と立ち向かわなければならないのですよ](p251) 最後の最後、ボアズがたどり着いた真理とは…それはなかなか意外なものである。これを読んで大笑いしてしまうか、納得してしまうかは読者次第。でもまあ、こういうのもアリかなあという気はする。 いや、実際僕は価値観が変わるくらいビビったのだ。 読み終えたあと、人生の見方がちょっと変わってしまうかも知れない。宇宙さえも変えてしまおうというボアズ視点の物語を読み終えてから自分を振り返ってみると、なんだか俺って小さなことで悩んでいたなあと思う。 大げさに言えば認識の変容。そんな感覚を感じることができるのがこのSF小説の最大の面白さだろう。
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